過去探し unknown past
タタタタタタッ……
「ああ……、またイタい台詞吐いちゃったかなぁ…… 」
居間の押入れを目指して階段を降りる僕は、女の自分に残してきた言葉を早速後悔し始める。
何度か落ち込む彼女にかけた思い出すのも恥ずかしい言葉の数々。一応思春期なので、ある程度のイタさは自覚していたのだが、どうも人類二倍以降はそれに拍車がかかっている。しかも、何故かもう一人の自分の前でだけ。
いい格好を見せたいアユリさん相手ならまだしも、なんで同じ存在の前で大怪我を繰り替えす羽目になるのか?
まぁ、一応自分のことなんだから慰めずにほっとくのも手なんだが、心の奥にある何かがそれをさせてくれない。
僕の中の謎の価値観……? というか、正義感……? いや、やっぱり使命感って言葉がふさわしい気がする。
アイツの前で泣いちゃいけない。
アイツを守ってやらなきゃいけない。
アイツに頼られる存在でなきゃいけない。
そんな使命を出逢ったばかりの自分に抱いている。
まるで、僕らが……
「まっ、そんなわけねぇか。」 スゥッ……
頭によぎったありえない想像を自分で否定しつつ、押し入れの戸襖を開けると……
「あっ……!? 」
ガラガラガラガラガラガッシャーーーーーン!!
「ああ、しまった…… 」
なんて言ってはみたが、これに関して特に回避方法はない。
押入れを開いた瞬間、祇峰フタリ二人分の過去が雪崩となって溢れ出してきたのだ。
「危ねぇ…… 」
僕は咄嗟に横へよけたので巻き込まれなかったが、部屋が一瞬で惨状である。
色違いのランドセルやらアルバムやら、僕にしか関しない物と彼女にしか関連しない物。どれも融合相手が見つからずに弾かれた異物だ。もう消えてしまったかとも思っていたが、まだ形を保っている。今のところは、だが。
ビシシッ……!!
「やっぱ、あんまり時間はないか。 」
僕は目の前の惨状とアチコチからの亀裂音で残された時間の短さを改めて悟る。
僕らの思い出の山を構成する各品には、ところどころにベッド達と同じヒビが入り始めていたのだ。
そのヒビの存在が示すのは、言うまでもなく世界からの排除。まもなくの消滅だ。
「よし、とりあえず消える前に手がかりを……って、そういえばアイツ何やってんだ? 」
唯一頼れる人手が未だに二階から降りて来ない。
時間ももったいないので、呼びに行くつもりはないが、限られた中で一人でこの山を漁り切るのは確実に不可能。だから、さっさとこっちに来て欲しいんだが……
・
・
・
− 二階 −
「なにこれ……!? 」
「どういうこと……!? 」
「なんでこんな物が……!? 」
私は消滅を逃れた机の引き出しから子供の描いた古い絵を発見した……
それを書いたのはきっと幼稚園児だった頃のお姉ちゃん……
その絵の中には青空の下で手を繋ぐ3人の子供がいた……
“わたし”と示された子供のお姉ちゃん自身と……
知らない名前の書かれた二人……
でも多分この二人は……
同時に存在するはずのない私と私だ。
「ふたば と みらい……? 」