死迫る茶番 not suitable for despair
「僕らの過去か…… 」
現実に戻された私達は夢から得られた情報を一つ一つ整理した。
・私たちが自称神様と一体化していたこと
・世界が矛盾を排除しようとしていること
・終着点でなく出発点を勘違いしていること
・私たちも消滅はするが回避方法があること
・その回避方法と人類二倍の原因がなぜか共通していると言うこと
・私たちの過去に世界を変えるくらいの秘密があるらしいこと
・そして、謎のヒント『 愛=歪 』
こうリストアップしてみたが、今までの新情報よりは解決への道標がはっきりとしている。やっと謎解きらしい謎解きに取り掛かれるって感じ。
そして、その中で分かりやすく最も解決の鍵に近づけそうなものは、私たちの過去に秘密があるらしいということ。だから自分の記憶をどんどん遡ってみたけれど……
「いきなり、そんなこと言われても、二つの世界が合体しちゃうような壮大な過去なんてあるわけないよね……、 あなたは心当たりある? 」
自分に記憶の頼りがなかった私は、どうせないと思いつつも一緒に頭を悩ませる彼に尋ねる。
「んなモンあるわけないだろ。」
もちろん、世界をおかしくするような経験なんてない彼は即答。
「だよねぇ。あなたごときが私より、凹凸の激しい人生を送ってるとは思えないし。」
「おい、どの更地ボディが凹凸とかほざいてんだ。」
「あ゛んっ? 」
「あっ、ヤベッ……! 」ダッ……ガシッ
自分の失言に気づいた彼は階段へと逃げようとするが、私はその襟を引っ張って引き戻す。
そして、そのままボサついたヘッドを右腕でロック。
「グゥエッ……! 」
私に捕らえられた大罪人は汚く鈍い呻き声を漏らす。
「言ったねぇ? 禁句を言ってしまったねぇ? 」
説明しよう。私のスレンダースタイルに口を出した者は即刻死刑なのである。
というわけで締め上げて、腕の中にいる男の息を止めにいく。
グギギギ……
「私の体は空手用にわざと細くしてたんだよっ!! お腹も胸もっ!!」
「い、いや、腹はまだしも胸は無理じゃ…… 」
説明しよう。余計な口出しも死刑なのである。
というわけで腕力を上げる。
グギギギッ ……!!
「グルゥえ……!! 」
「どう? 反省したっ? 」
「わ、悪かった。ま、マジで悪かったっ! よく見たらちゃんと凹凸はあったな!! ちゃんとあるなっ!! 腹と尻でっ…… 」
説明しよう。死刑である。
というわけで死刑である。
グギギギギッ !!!!
「グフっぇ!! ギ、ギブ!! ギブ!! 消えるっ!! 身体消える前に息の根、消えるって!! 」
「あっ、そっか。」
怒りのままに執行人化していた私は、虫の息一直線男の必死の言葉によって現状を思い出す。そういえば、こんなことしてる場合じゃなかった。
「あーあ、なんかバカらしくなっちゃったっ。」スッ……
冷静になった私は大罪人を腕の中の死刑台から解き放つ。
バタッ
「グフっ……!! ハァ、ハァ……、謎解き前に死ぬとこだった…… 」
半殺しで釈放された罪人は膝をつきながら息を整える。そんな彼を横目に私は……
「もうすぐで死ぬかもってのに……何してんだろ私達? 」
死の迫る絶望的と言ってもいいこの状況で、あんな茶番を繰り広げられたことが信じられなかった。いや、正確にはそんなことができるくらいに心の余裕が生まれていたことが自分でも信じられなかった。