超常の先に existence of フタリ
「人間ごと融合……? 」
もう一人の私が導き出したこの人類二倍世界の終着点。
また“なに言ってんの?” ……と続けそうになったが、考えてみれば確かにしっくりくる。今までの超常に世界の融合というゴールを据え置いてみるとほとんどのことに一応の説明がつくのだ。
少なくともぶっ飛んだ仮説じゃない。(現状が既にぶっ飛んでるんだから、結論も当然ぶっ飛ぶよね。)あの光って引き付けられる戻り方も“一人に戻った”というよりは“一人に合体した”という方が相応しく思える。
「つまり人類邂逅は、世界融合の過程だったってこと……? 」
「そういうことだろうな。まず、世界融合の初めのフェーズとして二つの世界の人間以外が合体。そして第二フェーズとして人間が融合し始めてるみたいだ。なんで、この二つのタイミングに差がある理由と、融合する目的は未だ謎だが…… 」
私はやっと先を行っていた彼の頭に追いつく。
融合というワードは一気に超常に対する私の思考回路を開拓してくれた。
「じゃあ、スマホとかの部屋のものが消えたのは……、融合相手がいないからってことか。」
今度は疑問符に頼ることなく、消滅の理由に自分でたどり着く。
消えてしまったものは片方の世界にしかない物だけ。そのために融合の相手が存在せず、これから一つになる世界から消去されてしまったんだろう。それが今後の世界に残る人間の記憶だとしても……
しかし、消す対象が頭の中や家具とはいえ、共通点が無いものを排除するなんて、まるで差別行為みたいだ。私達のの大切なものが消えていなかったとしても、全く良い気はしない。
「でも、よく分かったよね。あのスマホが消えた時点から気付いてたんでしょ? 」
私は自分を出し抜いて融合にたどり着いていた彼に称賛を送る。
「ああ……、まぁ……な…… 」
なんかせっかく褒めたのにテンションが低いな。
まぁ、謎を大きく判明させることができたが、全体的には良展開は全く起きていない。だから喜んでくれないのも当然なのかもしれないけど……、それにしても顔が暗い。家に帰ってくる前の顔から全然……
− もしかしたら……、これまでで一番最悪なことかもしれない。 −
彼の深刻な表情から私はこの言葉を思い出す。
「そういえば、これまで以上の最悪って……? 」
どうやら、まだ追いつき切れていなかった私は再びクエスチョンマークに頼ってしまう。
先の言葉から私達に起こった超常は部屋の私物の消失。これも悲しむべきことではあるが、今までの出来事で最悪を決めるのであれば、ワーストは親友や父親に忘れられたことがダントツだ。思い出の品よりも、思い出そのものを失うことの方が辛いに決まっている。きっと彼もこの価値観は同じはずだ。
しかし、それにも関わらず、彼は忘れられる以上の最悪があると言ったのだ。おそらく、彼は頭の中で更にこの先のことを見据えている。部屋の消滅とは別の何かを……
「ねぇ、まさかここからまだ…… 」
「気付いてないのか……? 片方の世界にしか無い物が消えてるんだぞ……? まだあるだろ片方にしかなくて消えてない物が…… 」
「まだ消えてない物…… 」
彼の言葉を聞いて片側にしか無いものを思い出してみる。
既に消えてしまったのは、私たちに関する記憶や私達の性別が違うことでことなった収集物。でも、そのほかには何かある? 彼の口ぶりからするとすぐ気づけるものっぽいけど……
もしあるとするなら、やっぱり私達関連の物だと思…………ん? ちょっと待って。片側にしか無い原因は私達の性別が違うせいなんだよね……? 私が片側にしかいなくて、また彼も片側にしかいないから……って、まさかっ!!!
「そっか……、そうだよね。何で気づかなかっただろ? このルールが本当なら当然そうなっちゃうよね…… 」
「ああ。信じたく無いが…… 」
これで本当に彼の思考に追いついた。
確かに最悪が待っている。いや、周りに忘れられることの方が辛いのかもしれないが、そうだとしても最悪の部類には何の躊躇いもなく振り分けられる。そんな運命が私達の未来に逃れようもなく立ち塞がる。
この融合世界が両方にあって重なり合えるものしか受け入れず、そうで無いものを存在ごと追い出すのであれば、最も排除されるべきは記憶や部屋の相違を作った原因のはず。だって……
「私達もいずれ消えてしまう…… 」
「僕達もいずれ消えてしまう…… 」
二つの世界で祇峰フタリの存在は重ならないのだから。