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ブルータス、お前もか!

気が付けば、砂浜に埋められていた。

私は気絶をしていたような、していなかったような…?

頭だけ地面から出した状態で、視線を巡らせる。時間はそれほど経っていないらしく、空はまだ薄紫色だ。ラベンダーの香りがしそうな雲を眺めていると私の頭に乗っけられた大量のワカメが、砂浜に落ちる。

何じゃこれ…。

パティはいつの間にか、生首状態で波打ち際に埋められていた。

なんとか首を回して辺りを確認する、2人を発見。ノイとユア君は真剣に何か語り合っており、時たまノイは叱られている。

本当にこの2人は、どういう関係なの?

私の視線に気付いたのか、2人がこちらを向き

「起きたみたいだね」

と、ユア君が私を見下ろして微笑んだ。頭の中の殿様が『頭が高い!』と叫ぶ。

「立てるか?」

ノイに腕を差し出され、視線をアッチコッチに飛ばした。ノイは疲れているのか、鬱血しそうな勢いで肩を掴むユア様が怖いのか、私が埋まっている事に対して気が回らないようだ。何時もなら掘り起こしてくれそうなものだけど…とか、調子に乗った事を考えてしまう。

ここは他人に頼っていないで、自分で頑張らないと駄目だよね!

「立てるよ!」

と言い、砂の中でモゾモゾ動いた。

あれ?結構動けるぞ。

砂を力尽くで退かし、這い上がる。

「だ、大丈夫なの…か?」

「ありがとう!」

ノイに心配されると、照れ臭くて頬が熱い。私達の様子を見ていたユア君は、何か考える様に人差し指で顎をトントンと叩き、少し左下を向くと、今度は右上を向いた。以上の行動から、不安があって何かを想像し、過去の体験を思い出したのだと思う。

「うん。終わったな…。うん。」

「何が終わったの?」

と、ユア君に聞くと

「俺の役目の8割」

と答える。それは8割に注目すべきか、2割に注目するべきか。

コイツ、アレだな?匂わせるの好きだな?度々、意味深な事を言いやがって。

ユア君の言葉に、ノイがハッとした顔をした。

いや、お前も一枚噛んどったんかーい!

ユア君の役目と聞いて、今日起きた変化を考える。私が魔法を使える様になって、今まで微妙にしか覚えていなかった前世の記憶を、全部思い出したくらいだ。

大した変化は無いよなぁ…。

嘘嘘。大した変化あったよ。

私は駄目元で

「何か良い事があったのなら、お疲れ様。役目ってなーに?」

と言ってみたら、答えてくれる様子。てっきり意味深な言葉だけ残して、焦らして焦らして、愉悦に浸っているのかと思っていた。一瞬、ユア君に睨まれた気がしたので、頭を振って、変な考えを吹き飛ばす。

「レディに配慮して、まずは俺とユア君の関係から話そうか。多分、パティが思ってるのとは違うから」

そう言ってユア君が、意味深にノイの肩を抱いた。

何その、意味深な肩組み!?マジか!2人って付き合ってたりしちゃったりな関係だったのか!私は全然、構わん!いってらっしゃい愛の島!

私が爽快な笑みで祝福しようとすると、2人から割と強めに頭を叩かれた。頭の上でお星様がキラキラリンッとロンドする。

「ごわっ!!?すまん!痛かっただろ?ごめんな!何だか嫌な予感がしてつい…」

「そんなに気にしなくてもパティは馬鹿なんだから、100発殴っても大丈夫だって」

ユア君?アンタ、女の子は殴らないって言ったよな!

ユア君が私の心の声を読んだように

「人間とゴリラの区別くらいは付けてるよ」

と言う。

私、これでも お姫様みたいな扱いで育ったのになぁ!

ノイが自分の上着を流木の上に敷いて、私を座らせた。3人で車座になって、ユア君の話が始まる。

「それで、2人の関係って?」

「師匠と弟子って感じの親友かな」「ギブアンドテイクな関係だ」

2人が同時に喋って、ユア君は驚いた顔をし、ノイはジト目でユア君を睨む。

「今の割と傷付いたんだけど…」

天然で、ユア君はノイに嫌われていると知らなかったみたいで、ユア君が沈痛な面持ちで心臓を抑えた。この反応には、流石のノイも罪悪感を感じているようだ。

「ちょっとなら親しいかもしれないよな…うん」

と、蚊にしか聞こえない様な声で言う。

「裏で茄子頭って呼ばれてるの知った時よりショックだったなぁ…」

「ぎくっ!?」

ノイよ…。ぎくっ!?って言ったら、あかんで。

「こんな心無い人には、村長の座は譲れないなぁ〜。他の人を教育した方がマシだなぁ〜。ノイちゃんを使って、パティを理想の状態で育てる計画も瓦解しちゃったしなぁ〜。ノイ君は用済みだ!」

「という関係なのね」

「理解出来たみたいだね」

要はノイもユア君のオモチャなのね!

「パティ、変な事考えてない?」

「全然!」

ユア君はまだ疑わしそうな顔をしていたが、私の完璧な演技に騙されて真面目な事しか考えていないと思ったはずだ。

「それで?こっちも薄々勘付いてたけど、お前とパティも何かあんだろ?」

「パティ、服を脱いで」

「ほいさ」

腕をクロスさせ、砂まみれの上着に手をかける。

「ちょっ!?」

ノイが顔を真っ赤にして、両手で目を覆う。

裸くらい川で見たやないかーい。

顔を覆うノイに反して、ユア君は無遠慮な視線を私に向ける。

じろじろって字が背景に見える…。

「全治3ヶ月じゃ済まない怪我を負わせたんだけど…傷跡1つ無いね」

ユア君が糸目を髪目にした。

何であんなに細い目なのに、視線をビシバシ感じるのだろうか。

てか今、サラッと酷い事を言われた気がする。

「魔力に目覚めた子供によくある現象だね。ノイ君」

「信じられない程の怪力で、怪我の治りが早く、睡眠時間が短い」

「正解」

ユア君がお上品な動作で、ノイの髪を耳に掛けた。ノイが恥ずかしそうに、ユア君から距離を取る。

ふははは、よく調教されとる。

「そして魔力のある子供に対する法律。パティ」

「適切な機関によって保護・観察を受ける事、適切な機関によって指導を受ける事、適切な機関に所属し、魔術の発展、並びに、魔術師としての社会への奉仕活動、魔術師同士の助け合いを義務とする事」

「よく出来ました」

ご褒美とでも言う様に、ユア君が私の頭をポンポン撫でた。

「パティ、お前もだったのか…!」

ノイが衝撃を受けた顔で、背景に雷を落とす。私はブルータスか。

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