表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

4話

前書きという程の物はありません。

「...危ないところを助けてもらって、ありがとうございます」


戦いの熱はとっくに冷めていた。


それから暫く経った。ようやく落ち着いた様子で、少女は感謝の言葉を口にする。


「気にすんな。あんなのは遊びみてぇなもんだ」


男は、事も無げに言いながら大剣を背負った。背負い方はシンプルで、切っ先を受ける革のホルダーに差し込んだ後、留め具のついたベルトで固定するだけだ。背中に心地よい重みがかかる。


手持ち無沙汰の手でガシガシと頭をかきながら、男は少女に質問を投げかけた。


「お前、名前は?」


「私はモーントと言います。呪術師です」


「呪術師?」


男は首をかしげる。


「...もしかして、ご存知無いでしょうか?」


先ほどまでびくついていた少女の目が、意外そうに見開かれる。


「いや、そういうわけじゃないんだけどよ...」


呪術師。言葉としては知っていた。自分に関する事は、厳重に錠がかけられたように思い出せなかったが、やはりこういった言葉は思い出せるようだ。


「...なんつーか、アレだろ?人を呪ったりとか、呪文唱えると木が一瞬で育ったりする...」


「うーん...ちょっとそれは...違いますけど...」


だが自分の口から出てきた『呪術師』は、まるで子供の認識といった風の表現だった。困ったように眉をひそめる少女を見て、男は胡乱げな目でため息をつく。


(...記憶無くす前の俺って、何やってたんだ?)


男は落ち込んだ。記憶を失う前の自分は、きっと粗暴で無知な人間だったのだろう。


「気にしなくても大丈夫ですよ。呪術師は昔よりも殆ど数が減ってしまったみたいなので...。王都の人たちでも、実際に見たことのあるという人は少ないと聞きます」


自分よりも幼そうな少女の擁護が胸に刺さる。男は顔をしかめた。


「...ところで、貴方のお名前は?」


「あー...名前なぁ」


どうしたものかと、男は頭を捻らせた。モーントが不思議そうに問い掛けてくる。


「...どうかしました?」


(...隠しても仕方ねぇ、か)


男はため息をついて言った。


「覚えてない」


「えっ?」


「覚えてないんだよ。自分の名前も、生まれも、自分に関わることは全部覚えてない」


キッパリと言い切った。


「そう、なんですか」


(...ま、こういう反応になるわな)


答えに詰まり、押し黙ったモーントを見て、男は話題を変える事にした。


「...それより、ちょっと聞きたいんだけどよ。ここは何処だ?」


「ここは【自由の森】というところです。王都の【エオクシア】からは少し離れてますけど」


「自由の森に、王都エオクシア、ねぇ...」


今度は男が知らない単語だった。初めて聞く地名を、飴玉を口で転がすように呟く。それを最後に、2人の間に沈黙が訪れた。


(どーしたもんかね)


男は空を見上げ、今後の身の振り方について考える。


まずはエオクシアに向かうのが堅実な選択だろう。王都と言うだけに、人も集まってきやすい。必然的に情報も集まるだろう。そこで記憶を取り戻す方法を探るしかない。


(けど...)


そこまで考えて、ふと男の頭に疑問が浮かんだ。



(記憶を取り戻して、その後はどうする?)



もし記憶が戻れば、自分の故郷や、もし居るなら親しい人間と再会出来るかもしれない。だが、そう簡単に記憶が戻る訳では無いだろう。少なくとも数年はかかるに違いない。


男は、地面に倒れた巨人を見つめる。



こんな化け物が闊歩する世界で、自分が記憶を取り戻すまで、待っている人間は居るのだろうか?



(...バカバカしい、悲観はやめだ。その時はその時だろう)


男は頭を振り、嫌な想像を振り払った。


まずはエオクシアに行く。そこまで考えると、男は踵を返そうとする。


「んじゃ、そういうわけで...」


その時だった。モーントが顔を上げ、意を決したように叫んだ。


「あの!」


男がモーントの方を向く。目と目が合った。彼女の薄く灰みがかった瞳が、まっすぐこちらを見据えた。


「お願いします。お礼なら出来る限りの事はします。だから...」


そこまで言うと、少女は深々と頭を下げた。



「私の村を、助けてください!」

後書きという程の物もありません。何を書いたものか...。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ