3話
今のところオラクルも目覚めも出てきてませんね。そこまで書くのにどれ程かかることやら...。
人間が巨人を圧倒している。
モーントは目の前の光景に、ただただ目を疑うばかりであった。これは幻なのだろうか。自分が苦しまないように、神様が見せてくれているのだろうか。
そんな彼女の考えを、戦いの衝撃が吹き飛ばす。
巨人が棍棒を横に薙ぎ払った。男はそれを、大剣を斜めに寝かせて受け流す。
次は上からの振り下ろし。これは大剣すら使わず、身を軽くひねるだけ。モーントの服すらも、棍棒が地面に叩きつけられた余波で揺れるが、男は涼しい顔をしている。
(大人と、子供)
モーントはそう思った。やっていることは殺し合いのはずなのに、子供の癇癪を大人が笑って受け流しているような、そんな危機感のなさがこの戦場にはあった。
巨人を手玉にとっている男の顔は、よく見えない。余裕そうに見えて、実は歯を食いしばって集中しているのだろうか。それともあの不敵な...あるいは不遜な笑みを浮かべて、悠々と攻撃を見切っているのだろうか。それはモーントには分からない。
だがその中で、着々と巨人が追い詰められていくのを、モーントは感じていた。
巨人の動きが鈍り始めているのが、素人のモーントにも分かる。その反対に、男の動きは鋭くなっていく。
閃光。
モーントの目に、男の姿が眩しく焼き付いた。巨人の恐怖に怯える自分たちにとって、彼は希望の光かもしれないと。
モーントは息を呑む。視線に熱がこもる。そして彼女は、決着の時を待った。
(なーんか、見られてるねぇ...)
巨人の攻めを難なく弾き返しながら、男はちらりと少女の方をうかがった。少女の格好に、思わず気が抜ける。
まず目につくのは、痛々しい血まみれの左腕。だが男は、血が乾いていることを見抜いた。服の上から見ただけで詳しいことは分からないが、形が明確に崩れている所も無い。見た目の印象よりは軽傷の様だ。
だが、男が呆れたのはそこでは無かった。
顔。ぽかんと口を半開きにし、目を真ん丸にしてこちらを見つめている。
(白馬の王子じゃねんだっつうの。そんなに見てんじゃねぇ)
その時だった。
男の上に黒い影が落ちる。巨人の身体が弓のように反らされ、棍棒を振りかぶっていた。苛ついたような雰囲気を振りまく、荒々しい攻撃だ。
「悪かったな、集中してなくて。...まあ、命が延びて良かったじゃねぇか」
男はそう呟き、剣を下段に構える。指のひとつひとつを動かし、丁寧に握り直す。
意識を研ぎ澄ます。
「...でも、悪いなぁ、ここで打ち止めだ」
棍棒が振り下ろされた瞬間、男は意識と共に、一気に身体を飛び出させる。僅かに空いた隙間に身体を滑り込ませ、剣を振り出した。
剣身が、巨人の腕に食いこむ。
「うおらぁっ!!」
息を吐き、気勢を上げ、一気に剣を振り抜いた。両腕と棍棒が宙を舞う。男は切り抜けた勢いで回転した。
巨人が、命乞いをするように声を漏らした。
「遅ぇよ!!」
剣を腰だめに構え、ガラ空きの胴体に突き出した。肉を貫く感覚が、大剣を通して手に伝わって来る。
巨人の口から血が吹き出た。後ずさりするように足が動く。
男が剣から手を離す。勢いが僅かについた巨人の身体は、仰向けに倒れ込んだ。
男は、少女の方に顔を向ける。ニヤリと笑い、少女に語りかける。
「...ま、ざっとこんなもんよ」




