7話 おっさんの初エンカウント
てっきり洞窟のような真っ暗な場所に出るものだと思っていた。
地下と言うからには湿気が溜まったような重苦しい空気なのだろうと思っていた。
しかしこの地下二階という空間には太陽があった。
雲ひとつ見当たらない快晴の空に木々が点々と生えた草原にしか見えなかった。
このような場所が地下であるとは思えないが、実際地下二階と表記されているので間違いではないのだろう。
移動して直ぐにポータルは光を失い起動を止めた。
此処からは手掛かりを探し更なる地下への道を見つけなければならない様だ。
取り敢えず迷わない様にと方位磁石を召喚して北へと進んでみる事にした。
数分ほど歩いただろうか、遠くに何か居るのが見えた。
近づくたびにそれはハッキリと見えるようになる。
兎だろうか、多分兎だ。
多分と言うのは俺の知ってる兎の数倍は大きく、兎の頭が俺の膝の辺りに達するほどであったからだ。
兎の方もこちらを認識したらしく赤い瞳で見つめて来る。
!!!!!!!!!!
次の瞬間、大きく跳躍したかと思うと俺の頭目掛けて太い脚部で蹴り飛ばそうとしてきた。
間一髪地面に転がりながらも何とか避ける。
ズドン!!っと重々しい音と共に地面を揺らしながら兎が着地するとまた飛び上がろうと姿勢を低く身構える。
冗談じゃない、あんなのまともに当たったら首の骨がへし折れちまっても可笑しくない。
さっきは何とか避けたが今度は体制が最悪だ。
このままだと踏みつぶされちまう。
俺は転がったままAKMの銃口を兎に向けると無我夢中で引き金を引いた。
銃撃の反動であるリコイルにより手元はガタガタに狂うが、的が大きいのが幸いしたか兎に幾つもの銃弾をぶち当てる事が出来た。
何とも言えない叫び声のような断末魔を上げて兎は飛び上がる事なく地面にひれ伏しそのまま動かなくなった。
はは、何とかなったな・・・
銃って凄いや、あんな化け物でもちゃんと効果あるんだな。
兎の死体は黒い塵のようなモノに変化し空気中に溶けて消えて行った。
そしてその場所には小さな小さな宝石のような綺麗な石ころだけが残った。
起き上がり土を払うとそれが何なのか早速知識の書を使い調べる事にした。
どうやらこれは魔素と言うものらしい。
先ほどの兎も調べてみた所ジャイアントラビットと言う名前の魔物であったようだ。
魔物と言うのは有機物無機物問わず魔素により変化した存在であると言う事は判った。
RPGで言うモンスターと言う奴なのだろう。
そしてこの魔素とやらは浄化したら純粋な魔力石になり色んなものに使えるらしく集めておいて損は無いと判断したので持って行くことにする。
知識の書を閉じると腰を下ろし、先ほど使った銃弾を補充する事にする。
先ほどの戦いで判ったが、今の俺にはこれが生命線だ。
シロイミライも言っていた。
リロードしなきゃ正面からの撃ち合いは勝てないぞと。
球切れなんて事になったら一大事で済まないだろう。
リロードは丁寧に的確に行わないといけない、手を抜けばそれだけ辛くなるだろう。
弾を込め終わり再び立ち上がると、方位磁石を確認してもう一度歩き出すのであった。