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縁の本棚  作者: 雪縁
99/306

本日の一冊 「いちめんのなのはな」

 山村暮鳥詩集

「おうい 雲よ」より「いちめんの なのはな」【岩崎書店】

                  山村暮鳥作


 この数日、春めいた気候が続いている。

 暖かくなるにつれて、さまざまな花がわれ先にと、つぼみをふくらませ、出番を待っている気がする。

 梅、水仙、オオイヌノフグリ、すみれ……いろいろあるが、やはりこの花には魅了される。

 菜の花。

 あざやかな黄色は、春の訪れをかざるに本当にふさわしい花だと思う。


 初めてこの詩に出会ったのは、まだ小学校に上がる前だったかもしれない。

 おそらく姉の教科書に載っていたのを読んだのだと思う。



   風景

     純銀もざいく


  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  かすかなるむぎぶえ

  いちめんのなのはな


  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  ひばりのおしゃべり

  いちめんのなのはな


  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  いちめんのなのはな

  やめるはひるのつき

  いちめんのなのはな


 読んでいくうち、幼い心の中に、いちめんのなのはなが浮かび出てきた感動を覚えている。

 そして、なんとそのときおこがましくも、「わたしにだって、このくらいの詩、書けるわ」などと思ったのだった。


  暮鳥の織り成す世界。

 雲や花や果物や、わたしたちのごく身近にあるものばかりだ。

 その詩の美しさを素直に味わいながらも、時にふっと不安がよぎる。

 この「いちめんのなのはな」も美しさの中によぎる一抹の不安が感じられる。

 それに気がついたのは、もうずいぶん成長したあとだった。


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