本日の一冊 「雨の動物園」
「雨の動物園」【岩波少年文庫】
―私の博物誌―
舟崎 克彦作
私が幼いころ、我が家はちょっとしたミニ動物園だった。
スピッツ犬二匹、トラねこ二匹、ヤギ一頭、うさぎ一羽、ジュウシマツ二羽。
最盛期のころは、子猫と子犬と子ヤギまでもが加わって、家中が、ワンワン、ニャーニャー、メーメー、ピッピッとすごい騒ぎだった。
大人になって社宅暮らしになってからは、そういう機会には恵まれなかったものの、虫好き次男のイモリ、ザリガニ、オオクワガタ、子クワガタ、カブトムシ、スズムシのミニ飼育園にずいぶんと悩まされた。
ぽっぺん先生シリーズでおなじみ船崎克彦氏の「雨の運動会」は、国際アンデルセン賞優良作品賞、サンケイ児童出版文化賞を受賞した作品でもある。
ヒキガエルの章から始まり、コウモリ、トカゲ、犬、リス、そしてさまざまな鳥類。
母の死後、野鳥に興味をもちはじめた船崎氏は、小学生にして、鳥類研究所に論文を発表しようかというくらいに、いっぱしの鳥博士だった。
コジュケイ、ウグイス、ヒバリ、カッコウ、モズ、ヤマガラ、コマドリ、ジュウシマツ、錦華鳥、エナガ、カルガモ。
彼らとのかかわりをとおし、だんだんと変化していく少年の自分や、世の中の様子を見つめる作者の視線がある。
中でも、カルガモの人なつこさは作者の心に、幼いころに母と別れた自分を思い起こさせた。
夜はいっしょに寝てやり、どんどん親密な関係を築いていくが、そのカルガモを亡くしてしまったとき、大切に飼っていたすべての鳥をも放してしまうのである。
幼いころの自分にとっても、次男にとっても、飼っている動物や虫たちはみんな、大好きな友だちだった。そんな友だちを亡くすたびわんわん泣いた。
その悲しみ、喪失感は、限りあるひとつの小さな命と向かい合う時間の大切さを、着実に育んでくれたように思う。
小動物をこよなく愛する船崎氏の格調高い自伝的作品。
描かれている鳥や植物のイラストもすばらしい。




