本日の一冊 「海うさぎのきた日」
「海うさぎのきた日」【講談社】
あまん きみこ作
渡辺 洋二絵
息子たちの通った小学校で、八年間読み聞かせサークルの活動をした。
我が子の卒業とともに、メンバーもサークルを卒業。
けれども、ともに活動したメンバーの結束はかたく、お互いの子どもたちが成人した今でも、読み聞かせOGたちの集いを時々行っている。
この「海うさぎの来た日」は、卒業メンバーのOGたちと現役読み聞かせサークルのメンバーがコラボで、ペープサートを作って、子どもたちに披露した思い出深い作品である。
物語は、少女の一人称で語られていく。
なわとびの苦手な女の子が、ひとりぼっちで砂浜にいる。子もりうたのような波の音を聞いているうち、だんだん眠くなってしまう。
ふっと目覚めると、あたりはにぎやかな声でいっぱい。
おおなみ こなみ
ぐるっと まわって
うさぎの目
ぐるっと まわって
うさぎの目
そのなわとびうたのとおりに、まっ白なうさぎたちが、海の色のようなきれいな青いひもをつかって、なわとびをしているのだった。
だれにもみえないはずの海うさぎが、わたしにだけは見えている。
うさぎたちは大喜び。いっしょになわとびしようとさそってくれるが、わたしはなわとびが大の苦手。
ためらっていると、なわとびの苦手な小さなうさぎが、「いっしょにとんでみようよ」と声をかけてくれた。
青い海にまっ白なうさぎたち。
なんて美しく、清々しいんだろう。
やわらかで大きな青い布に貝殻をはりつけたり、青く透明な、なわとびのひもをこしらえたり、白いうさぎをたくさんこしらえたり……みんなで知恵を出しあい、ああでもない、こうでもないとペープサートづくりをした。
波の演出には、下から二台の扇風機をあてて。
波の音には、箱の中に小豆を入れて。
何度も練習して、披露し終わったときの、子どもたちからもらった拍手の嬉しさは、とても口では言い表せない。
本作品は、あまんきみこ氏「だあれもいない」に収録されている短編である。
地味ではあるが、あまんきみこ氏の数多い作品の中で、もっとも好きな作品だ。




