本日の一冊 「夢は書物にあり」
「夢は書物にあり」【平凡社】
出久根 達郎著
作者は、作家であり、古書店の店主でもある。
その著書は多数で、若い頃にいろいろ読んだ記憶がある。
中でも本書がいちばんのお気に入り。
なぜならわたしがいちばん賛同できる部分があるからだ。
そのひとつが「図書館浴」。
なに? それ。
首をかしげる方もおられるかもしれない。
けれど、わたしは、読んだ瞬間に思わず、それ、それ、それなのよと声をあげたくなった。
樹々の酵素を浴びて心身を清める「森林浴」に対し、図書館に一定時間身を置くことで、本の気を身体にとりこむ「図書館浴」。
著者の知り合いがそう称して実行されているらしいが、わたしもまさに同感である。
「図書館浴」とは、本を読むわけでなく、書架の本をただ漫然とながめる。ただそれだけで、イライラした気持ちが霧のように晴れていく。不思議と心が和むのだ。
「書店浴」もできそうだが、この場合、買いたいという欲が出てくるのが問題だ。それが叶えられないときはかえってストレスになってしまう。図書館の本であれば、カードさえあれば、無料で何冊も手にいれられる安心感がある。
「図書館浴」。興味のある方はぜひお試しあれ。
もうひとつ。
読書の効用について。
―本を読むといいことがありますか?
この問いに対し、作者の言葉を整理すると、以下のようである。
―本をたくさん読んだからと言って、大金持ちになった話は耳にしないし、財産をつぶしたという例も聞かない。けれども、まず、
「人相がよくなる=卑しくない顔になる」
「読書は他人を幸福にする」
「読書は恋を生む」
この三点の効用にも、ふんふんとうなずける。
それから、「書物の気について」
わたしはたいてい、どこへいくときも文庫本を二、三冊はカバンの中に持参している。
たとえよまなくても、持っているというだけで、とても気持ちを落ち着けてくれるのだ。
著者もまた、書物というのは、活字だけでなく、そのもの自体に気があると述べている。
そのように考えれば、本はまるで生きもののようでもある。
その生きものと、物心ついたときからつきあってきて、ひとつだけ胸をはっていえることは、このすばらしい生きものとの生活は、限りない夢と幸せを運んでくれるということなのである。




