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縁の本棚  作者: 雪縁
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本日の一冊 「おにたのぼうし」

「おにたのぼうし」【ポプラ社】

         あまん きみこ作

         いわさきちひろ絵 


『あったかいあかごはんとうぐいすまめ』

 恒例になった、我が家の節分の夜の献立は、この絵本から拝借いたしました。


 おにたは気の良いくろおにの子ども。

 まことくんの家に住んでいて、親切なことばかりしているのですが、だあれも気がつきません。

 豆まきの夜。おにを追い払うために、まことくんはおにたのいる、ものおきごやにも豆をまきました。  

 つのかくしのふるいむぎわらぼうしをかぶって、ものおきごやから出て行きながら、おにたは思います。

(にんげんって おかしいな。おには わるいってきめているんだから。おににも、いろいろ あるのにな。にんげんも、いろいろ いるみたいに)


 そしておにたは、ひいらぎもなく、まめのにおいもない、一軒の家を見つけます。

 ひとりの少女が、病気のおかあさんを看病しています。台所には食べるものはなにひとつありません。

 おにたは、あたたかそうなあかごはんと、うぐいすいろのにまめを持っていってやりました。

 少女はうれしそうな表情をしました……が、

「あたしも まめまき したいなあ。おにがくれば、おかあさんの びょうきがわるくなるわ」

 しみじみとこう言うのでした。


「おにだって、いろいろあるのに。おにだって……」

 悲しみに打ちひしがれるおにた。

 読みながら、せつなさに胸がしめつけられます。


 ふと思います。

 人間のすがたをしていながらも、実はおにの心をもった人間。

 自分の欲望を満たすために、情け容赦なく他人を傷つけ、ときには我が子にまでも危害を加えるおにより怖い人間たちが、ぞろぞろと増えてきた現代。

 追っぱらうべきは、そういうおに人間たちでしょう。


 むぎわらぼうしをかぶったおにたの目。

 いわさきちひろさんが描かれた、くっきりとしたその目からは、純粋なおにたのやるせない悲しみが感じられてきてなりません。




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