本日の一冊 グリム童話「ラプンツェル」
グリム童話「ラプンツェル」【岩崎書店】
那須田 淳訳
北見 葉胡絵
小学生も五年生以上になると、教室の読み聞かせに、何の本を持っていこうか結構悩んだ。
彼らは少なからず、お兄さんお姉さんだというプライドを持っているので、あまり幼稚な本だと聞いているふりをして、表情はしらけているのだ。
彼らが目を輝かせて、一生懸命に聞いてくれる本はないだろうか。ある程度長くて、まとまっていて、大人が読んでも面白い読み物……そういう本を必死に探していた。
そして巡り会ったのがこれ。「ラプンツェル」
グリム童話というものの、わたしにとっては初めて出会った本だった。
「ラプンツェル」ってなんだろう?
物語を読むにしたがってわかってきた。
サラダ菜をひとまわり小さくしたような菜っ葉のことであるらしい。それもみずみずしく、鮮やかな緑色をした菜っ葉だ。
むかし、あるところに夫婦がいた。やっと思いかなって妻は身ごもったけれど、となりの庭に青々と
生えているラプンツェルが食べたくて、食べたくて、たまらない。けれども隣は魔女の家。うかつに手は出せない。しかし、ラプンツェルのこと以外考えられない妻のために、夫はこっそり盗みに行くが、ついに魔女に見つかってしまう。
そして魔女は夫婦に、ラプンツェルとひきかえに、生まれた子どもをもらうことを約束させたのだった。
魔女にひきとられた子どもは、ラプンツェルと名付けられ、美しい娘に育つ。
黄金の滝のように、長く金色の髪をもったラプンツェルは、十二歳になったとき、森のおくの塔に閉じこめられてしまう。
階段もなにもない塔で、魔女はラプンツエルが窓から垂らす長い髪をつたって、上にのぼっていくのだった。
ある時、その様子を見た若い王子が魔女と同じように塔からたらした髪をつたって登っていく。
やがて二人は恋におちるが、それはたちまち魔女の知るところとなり、ラプンツェルは長い髪をばっさりと切られて森の奧深くに捨てられる。一方、そのことを知った王子は悲しみのあまり、命をたとうとするが、盲目のまま、生きながらえる。
数年が過ぎ、盲目の王子が森をさまよっていると、聞き覚えのある歌声が聞こえてきた。なんと、そこには自分との間に生まれた双子の母親となったラプンツェルが……ラプンツェルの流した涙が王子の目をもとどおりにしてめでたし、めでたしというストーリー。
今、手もとにある本と、読み聞かせに持っていった本は、挿絵が違う。読み聞かせで使った本の方がだんぜん迫力があった気がする。
いずれにしても、高学年のお兄さんお姉さんたちばかりでなく、読み聞かせる大人をも満足させた一冊。ストーリーも興味ぶかいが、塔から垂れる黄金の滝のような長い髪の挿絵に圧倒される。
図書館で見つけたら、ぜひお薦めの一冊です。




