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縁の本棚  作者: 雪縁
71/306

本日の一冊 「雪窓」

「雪窓」【偕成社】

       安房 直子作

       山本 孝 絵


 東京の都心部でもここ数日は寒波が激しいそうだ。

 こんな寒い夜に食べたいものは、やはり鍋もの。

 そこでとりださずにはいられないのが「雪窓」の絵本だ。


「雪窓」とはおでんやの屋台の名前。

 ある夜、一匹のたぬきがやってきて、三角のぷるぷるがほしいという。望みどおりにあつあつのこんにゃくをほおばりながら、とても「雪窓」が気に入ったたぬきは、それからもちょこちょこやってきて、おやじさんの助手になる。

 おかみさんを亡くし、そのうえ、ひとり娘の美代も亡くした、ひとりぼっちのおやじさん。

 助手のたぬきと過ごす時間はとても楽しいものだった。


 ある夜のこと。

 遅い時間に雪窓に、ひとりの娘がやってきた。

 驚くことに、山ひとつ越えた野沢村から、雪窓のおでんを食べたくなって来たという。

 不思議とその娘は亡くなった美代にそっくりだった。

 娘はおでんを食べ終わると、ふっといなくなり、屋台には白いアンゴラの手袋が片方だけ残されていた。


 おやじさんは片方だけのてぶくろが気になって仕方ない。

 ついに野沢村で屋台を出そうと、たぬきと出かけることにした。

 雪窓の屋台をひっぱり、おやじさんはたぬきとともに険しい山越えをする。

 木の精、天狗、子おにたちなど、さまざまな魑魅魍魎ちみもうりょうたちがはびこる山の夜道。

 ついに、ひとつ目と出会った瞬間、さすがのおやじさんも驚いて両手を離す……とたん、屋台はみるみる雪の下り坂を転げ落ちていってしまった。


 雪窓は壊れてしまったのだろうか。

 いいえ。雪窓は、野沢村の入り口付近にぽつんと止まり、灯りがともって、中には美代そっくりのあの娘がいた。たくさんのお客を呼んでくれていたのだ。


 この作品は、安房直子コレクションに入っているが、絵本は、また違った味わいがある。

 賢そうなたぬきの表情。

 人情味あふれたおやじさんの顔。

 一列に並んだ、いたずらっぽい子おにたち。

 可愛らしい笑顔の美代など、挿絵一枚一枚が生きている。

 装丁の美しさも、いかにも雪窓らしく、寒い夜には手にとりたくなる一冊だ。

 

 


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