本日の一冊 「たたされた二時間」
「たたされた二時間」【フェア文庫】
代田 昇作
長 新太画
主人公は二年二組のてっぺい。
待ちに待った給食のカレーの日に、おかわりしそびれてやけくそになったてっぺいは、食器をたたきながら、でたらめの歌を歌いまくる。
「ちんぼんじゃらん さらめのさっさ」
すると、ノリの良いクラスメイトたち。男子も女子もおどりながら、
「ちんぼんじゃらん さらめのさっさ」
昼休みじゅう、うかれてしまう。
怒ったのは、担任の丸田二年生ことシャクレナスビ。
この歌にどんな意味があるのかと、しつこくてっぺいを怒り、なんの意味もないとてっぺいがこたえると、激怒して、授業の間ずっと、てっぺいをたたせた。
けれどもたたされている間じゅう、てっぺいはいろいろと空想にふけって遊ぶ。
目から出る光の熱で、シャクレナスビをやりこめたり、生徒にしたシャクレナスビをしかりつけてほくそえんだり。そして小声で「ちんぼんじゃらん さらめのさっさ」と歌ってみるのだ。
あっさりとあやまればすむことだと忠告する友だちもいるけれど、てっぺいは断固としてあやまらない。形だけあやまるなんてしたくない。子どもにだって誇りはあるのだ。
ずいぶんと昔のことだけれど、作者の代田昇氏が講師をつとめた童話の講座で、勉強させていただいたことがある。
子ども好きで人情味あふれた、優しいお人柄だった。
早くに亡くなられてしまったけれど、この本は先生の思い出として、縁の本棚に長く置いておきたい一冊なのである。




