本日の一冊 「かいうりぜんさん」
「かいうりぜんさん」【国土社】
小林 しげる作
新野 めぐみ絵
海で掘った新鮮なアサリ貝を軽トラに積んで、海のない町や村に売ってまわる、ぜんさん。
今朝も早くから、軽トラを走らせる。
しらじらと夜が明け、清々しい朝の空の下。
山の村に到着すると、古い神社の入り口で
「あさりが~い、あさりが~い。おいしいあさり貝はいかがですか?」
さっそくスピーカーでアナウンス。
すると、まもなく神社の裏手から二人の子どもたちがやってきた。
二人はそれぞれの手に百円玉をにぎっている。
あさり貝はひと袋二百円。
ぜんさんは、お姉ちゃんらしき子どもの手にあさりの袋をわたした。
すると、男の子がうらめしそうにひと言。
「ぼくにもちょうだい」
ぜんさんは思わず、
「貝はお姉ちゃんに渡したからね。帰ってお母さんによくおそわるんだよ」
と言い残し、立ち去ってしまう。
男の子の気持ちを考え、後味の悪いぜんさん。
いろいろ悩んだ末に、ふっといい方法を思いつく。
その方法とは……?
そして物語は意外な結末が待っている。
優しい、優しいかいうりぜんさん。
きっと作者もぜんさんのように、子どもが好きで、あたたかい心の持ち主なのだろうと思わずにはいられない。
小学校低学年から楽しめる、質の良い童話である。




