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縁の本棚  作者: 雪縁
63/306

本日の一冊 「ごんぎつね」

「ごんぎつね」【岩波少年文庫】

         新美 南吉作


 最初にこの物語に出会ったのは、小学生に入る以前だった。おそらく母に読み聞かせしてもらったのだと思う。

 可愛い挿絵のきつねのごん。よかれと信じてやっていたことが思わぬ誤解により殺されてしまう。

 そのときのショックが大きすぎて、以来、私にとってはずっと読み返したくない本だった。


 二人の息子たちが幼い頃、寝る前のひとときをいっしょに本を読むのが日課だった。

 たいてい一人が二冊好きな本を持ってくる。お気に入りの本は何度読んでも飽きないらしい。繰り返し同じ本を読んだものだ。

 そんなある日。「これ、よんで」と次男が持ってきた本に目をやると、「ごんぎつね」だった。

 家にない本だったから、長男が学校の図書館から借りて帰ったのだろう。内心弱ったなあと思ったが、自分はもう大人。だいじょうぶだとさっそく読み始めた。


 きつねのごんは、山の中でひとりぼっちで暮らす子ぎつね。兵十の捕った魚を川にもどしたり、うなぎを横取りしたり、大のいたずら好き。

 ある日、ごんは兵十の母親の葬式を見かける。

 自分と同じひとりぼっちになった兵十。自分が悪さをした魚やうなぎは、母親思いだった兵十が栄養つけさせようと捕ったものだったと知り、反省する。

 ごんは、悪さの埋め合わせをするかのように、山でとれたクリやまつたけを、毎日兵十の家にとどける。しかしある日、ごんが自分の家に入っていくのを見た兵十は、きっとまた悪いことをしに来たのだろうと思いこみ、火縄銃で撃ち殺してしまうのだった。


 息子たちがしんとして聞き入る中、淡々と読み進めていた私だった。

 なのに、話が進むにつれ、クリやまつたけが散乱した中に、一匹のキツネが倒れ、そのそばで、兵十の火縄銃の筒口から、青い煙が細く立ち上るラストシーンが、脳裏にまざまざと浮かんできた。

 次第に鼻声になって、何度も言葉につまる。そんな私を、チラチラ不思議そうに見つめる次男。

 そのとき、当時一年生だった長男が、何も言わずにその本を自分の側に引き寄せると、続きを最後まで読んでくれたのだった。


「ごんぎつね」

 この本の朗読は今も苦手だ。



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― 新着の感想 ―
[良い点] この作品も実に思い出深いお話です。 私の場合は、小学校の時の国語の授業で接しました。 ごんの届けた魚で兵十が魚泥棒の濡れ衣を着せられる所では、「お母さんが死んだばかりなのに魚泥棒に疑われて…
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