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縁の本棚  作者: 雪縁
54/306

本日の一冊 「賢者の贈り物」

「賢者の贈り物」【光文社】

      O・ヘンリー作

      芹澤恵訳



 クリスマスは贈り物をするのが楽しい。

 年に一度、家族や友達の笑顔を思い浮かべながら、あれやこれやと品物をさがすことは、この時期ならではの楽しみ。でも、贈りたい人が多いので、ほんの気持ちばかりしか差し上げられないのだけれど……。

 幼い頃から好きだった「賢者の贈り物」を再読してみた。


 ジムとデラは仲の良い若い夫婦。

 生活にはかなり窮していて、値切るだけ値切った買い物でためたお金もわずかなものだった。

 明日はクリスマス。デラは愛する夫のジムに贈り物がしたくてならない。

 何か気がきいていて、めったになくて、正真正銘の本物といえるもの。ジムの持ち物になる栄誉を担うに足るような、それが無理でもせめて少しでもそれに近いもの。

 そういったものを贈りたいけれど、現実は厳しい。すすり泣きをしながら、デラはある決意をする。


 この若い夫婦の財産は二つあった。

 一つはジムの祖父から父に、父からジムに受け継がれてきた金時計。

 もうひとつは、まるで褐色の滝のように、つややかに輝きながら、身体に沿って流れるデラの髪の毛なのだった。


 その大切な財産のひとつを、彼女は惜しげもなく手放した。

 髪を売ったお金で、デラがジムのために買ったものーそれは、もうひとつの財産である金時計につける プラチナの時計鎖。品質だけで十分価値を伝えられるようなものだった。


 ジムの帰りを待つ間もデラの心は落ち着かない。

 そしてついに二人が顔を合わせたとき。

 ただ、じっとデラの顔を見つめるジムとの間に沈黙が流れた。

 怒りでも、驚きでも、非難でも、恐怖でもない、デラがこれまでに見たことのない奇妙な表情をうかべるジム。

 ジムが差し出したデラへの贈り物とは……。


 物語は最後にこう結んでいる。


 そう、東方の賢者たちは、言うまでもなく賢い人たちで、かいばおけの中の嬰児に贈り物を持ってきた。クリスマスに贈り物をすることは、そこから始まったのである(中略)

 最後にひと言、現代の賢い人たちに申し上げたいことがある。贈り物をする人たちのなかで、このふたりこそが最も賢い人たちだった、ということだ。贈り物をあげたりもらったりする数多の人々のなかで、このふたりのような人たちこそ懸命なのである。いかなる時空にあっても、いかなる境遇にあっても、このふたりほど賢明な人たちはいない。彼らこそ賢者である。

 

 クリスマスにふさわしい、心を打つ名作だと思う。




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― 新着の感想 ―
[一言] 実際は 『愚者たちの贈り物』 になってしまいましたが 相手を想いやる気持ちは尊いモノ だと再確認し ほのぼのとした暖かい気持ちになりますね (;^ω^)
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