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縁の本棚  作者: 雪縁
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本日の一冊 「ごきげんな裏階段」

「ごきげんな裏階段」【新潮文庫】

         佐藤多佳子作


「サマータイム」や「黄色い目の魚」など、ヤングアダルト的な作風で人気の佐藤多佳子氏の児童向けの物語。


 三階建てのみつばコーポラスの裏階段は、人がめったに来ないさびれた場所。壁にはヒビが入り、手すりのペンキははげ、二階の天井には大きなクモの巣がある。おまけに空気はいつも湿っぽくて、とにかく気味が悪い。


 三○六号室の学とくるみは、そこで一匹のノラの子猫を見つける。抱きしめたくなるくらいに可愛らしい子猫に一目惚れした学は、「有沢のおばば」と恐れられているコーポラス管理組合の理事長の目を盗み、エサを与えに行くけれど……。実はその子猫、大好物は、タマネギだった。そしてタマネギを食べ続けた子猫はやがて……。(第一話「タマネギねこ」)


 二一二号室のおじさんの家で暮らす一樹は、音楽の時間に行われるリコーダーに手こずっている。

 裏階段で練習している一樹の目の前に、一匹の大きなクモが! しかもそのクモは背中に二本の笛を背負っている。ドクダミの茎で作った赤いのと、ヒマワリで作った黄緑色。試しに赤い笛を吹かせると、ひーりん、ひーりん、はらりん、ほう。耳をふさぎたくなるような不気味な音色。実はこれ、不運を呼び寄せる笛だった……。(第二話「ラッキー・メロディ」)


 三一○号室のナナは、手当たりしだいにモノをあけるのが好きだ。引っ越してきてすぐに、ナナが興味を持ったのが裏階段のダストシュート。裏階段でこっそりタバコを吸うパパといっしょに、ダストシュートのふたをあけると、なんと煙でできた煙男・モクーが現れた。煙を食べて生きてきたモクーだったが、今は禁煙ブームに加えて、家の中で魚を焼いたりなどほとんどしなくなった。煙がないとモクーは暮らしてはいけない。そこでパパは、換気が悪くて、タバコの煙がもくもくしているスナックへ、モクーを引っ越しさせるのだが……。(第三話「モクーのひっこし」)


 どれも面白い。

 口をきくクモやねこ、怪人の煙男は、まさに魔法の存在なのだが、作者は魔法に焦点をあてているのではない。裏階段の不思議に一喜一憂する大人たちに守られ、それらを触媒としながら、徐々に変わっていく人間関係。三つの物語は単独なようで、実は繋がっていることに気づかされる。

 まずは、裏階段のワールドにどうぞ!




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