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縁の本棚  作者: 雪縁
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本日の一冊 「豆腐小僧双六道中ふりだし」

 「豆腐小僧双六道中ふりだし」【角川文庫】

            京極 夏彦作


 ホラーとミステリーだけはどうしても好きになれない。

 それでも、こわいものみたさで、小学生のころは怖いおはなしなどを、ちびちび読んでいたけれど、ひとりでいるとき、不意に思い出されてくる恐怖にトイレにも行けなくなり、寝られなくなり、困惑した記憶がある。

 人を殺した、殺されたという物騒なミステリーもお手上げ。つくづく怖がりやなのだ。


 そんな自分だが、ひとつだけとても好きになったホラーがある。(ホラーと呼べるかどうかわからないけれど)

 そのタイトルは「豆腐小僧双六道中ふりだし」

 読書家である先輩作家に貸していただいた本だ。

 ぶあつい文庫本の表紙には、大きな頭に笠を被り、手にはお盆を持った小僧の絵。そのお盆には紅葉豆腐が載っており、小僧はニコニコ顔でそれをなめている……。愛嬌があるとも、不気味であるともいえるけれど、この小僧はれっきとした妖怪。「豆腐小僧」として江戸後期の絵草紙、歌留多に登場し、人気者であったそうな。ただ、怖がらせるとか、人を困らせるような悪さをするとかは一切無くて、ただ豆腐を持って立っているだけの存在。

 本書はこの豆腐小僧が主役の物語である。


 相も変わらず飽きもせず、豆腐小僧は紅葉豆腐を持っております。腐りもしないところを見ると、これも並の豆腐ではないのでしょうな。

 つまりはこの豆腐も己の属性のうちなのだろうなーと、そんな風に考えますと豆腐小僧は複雑な心境になって参ります。そこでこの豆腐をば、ぱっと手放してしまったならば、自分はいったいどうなるのだろうと、そんなことも考えたり致します。

―ただの小僧になるのかな。

それとも。

―豆腐諸共消えてしまうか。

後の方が確率は高いだろうと、豆腐小僧はそんな風に考える訳でございます。

何故ならば。ただの小僧などという妖怪は居ないと、そう思ったからでございましょうな。

そう考えますと、盆を持つ手にもつい力が入ってしまいます。その瞬間にアイデンティティーが雲散霧消してしまうかもしれない訳でごさいますから、これも無理はございますまい。


 思い悩んだ末に、豆腐小僧は自らの存在理由を求めて旅に出るのである。途中出会う死神、鬼火、狸、達磨、管狐などさまざまなものたちとの会話の中で、妖怪論が白熱する。

 京極氏独特の語り口調で繰り広げられる豆腐小僧の珍道中。大いに楽しめる一冊だ。




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