本日の一冊 「じごくのそうべえ」
1年で最後の月となりました。毎日、本棚をのぞいてくださる方々、いつもありがとうございます。
仕事がら更新がお休みになりがちの月ではありますが、今月もせっせと本棚に入れてまいりますので、どうかお暇な時間にのぞいてみてくださいね。
「じごくのそうべえ」【童心社】
たじま ゆきひこ作
とざい とうざい
かるわざしの そうべえ。
いっせいちだいの かるわざでござあい。
朝の教室で読み聞かせがはじまる。
三年生のクラス。みんな真剣なまなざしで、くいいるように絵本を見つめている。
猿も木から落ちるのことわざどおりに、かるわざに失敗したそうべえは、火の車にのって地獄へ到着。
同じ仲間の、歯ぬき師のしかい、医者のちくあん、やまぶしのふっかいらとともに、えんま大王の前に連れて行かれて地獄行きとなる。
まず、落とされたのはふんにょうじごく。けれどじごくも水洗式になってしまってふんにょうが集まらない。
そこでじんどんき。人を食べるオニだが、歯ぬき師のしかいが、じんどんきの歯を全部ぬいてしまう。
かまれずにオニのはらに飛び込んだ四人がしたことは……。
その上からぶらさがっとるひも。ひっぱってみ。
おにが、くしゃみをしよるぞ。
ほな、ちょっとひっぱってみまひょ。よいしょっと。
そこのたまをこそばかしてみ、
おにが、わらいよるさかい
このたまでっか、せんせい。
こちょこちょ、こちょこちょ。
教室の中に、クスクス笑いが広がる。
そこのふくろな、そのふくろや。
へぶくろいうてな、こいつをけると、オニが へをこぎよるで。
これでっか。えい! ぼん
ぷー
こりゃ おもしろい。
教室は、やがて大きな笑いに包まれる。
「じごくのそうべえ」は上方落語の「地獄八景亡者の戯」といった大型落語を絵本にしたものらしい。
三途の川をわたって地獄に着くと、そこにはえんま大王がいて、生前悪いことをしたら舌を抜かれ、針の山に登らせられ、地獄に落とされる。
これらの知識がないと、落語もなかなかわかりにくい。せめて絵本で穴埋めを……という願いがこめられているようだ。
じんどんきのオニをやっつけ、えんま大王をあきれかえらせ、みごとこの世に生還してきたそうべえたち。
朝いちばんの読み聞かせは、やっぱり元気な笑い声が聞きたい。
そんな希望から、「じごくのそうべえ」は、毎年、朝のお話の時間に、全学年をまわった絵本なのだ。




