本日の一冊 「まぜごはん」内田麟太郎詩集
「まぜごはん」内田麟太郎詩集 【銀の鈴社】
内田麟太郎作
長野ヒデ子絵
「ともだちや」シリーズでおなじみの内田麟太郎の詩集。
その日その日の気分で書いたものばかり。だからタイトルも「まぜごはん」と名付けたのだそう。
「まぜごはんをどうぞ」と作者のお薦めどおり、何杯か軽く試食してみよう。
*おひさま
まあるいおなかの
おんなのひとがあるいてくる
おなかのなかにあかちゃんをかかえて
であったひとはおもわずほほえむ
(おめでとう!)
そうか
あかちゃんは
みんなおひさまなんだ
まあるいおなかから
まあるくひろがっている
あったかいひかり
おかあさんが
おひさまをかかえてあるいてくる
ああ おひさまがわらっている
*われ
ぶつだは ぶったか ぶたなかったか
みんなは ぶつだに きいてみた
ぶつだ こたえた
「わすれてしもうた」
みんなは おこって
ぶつだを ぶった
ぶつだ おこって
たたきかえした
「ぶつだ、ぶった!」
「ぶつだ、ぶった!」
ぶつだ
だれにともなく さびしくつぶやいた
「われ、ぶったなり」
*ドッチボール
カオリちゃんが すき
すき
すき
すき
すき
すき
うっとり
ボールがとんできた
―ケンタ すきだらけ!
*ひばりに
ぼくにはことばがない
きみにかけることばがない
ぼくはただすわるしかない
うつむくきみのとなりに
いや ぼくはたんぽぽになろう
きみのとなりにさく
いや たんぽぽのわたげになろう
きみがそらへとばす
きみのおもいのそのことばを
とどけるゆうびんやさんになろう
そしてとばされながらひばりにはなそう
うつむいていたきみがかおをあげ
ぼくをそらへふいたことを
きみのいのちがじぶんでこしらえた
ちいさなかぜのことを
かくしきれないよろこびに
こえをつまらせながら
ひばりにはなそう
ちいさな ちいさな かぜのことを




