本日の二冊 「いただきます」「ママ おかわりっ」
「いただきます」「ママおかわりっ」
小林 カツ代・【女子栄養大学出版】
先月の終わりごろだっただろうか。九州のとある県で、給食中に小学一年生の男の子が、献立の味噌おでんに入っていたうずらのたまごを喉に詰まらせ、亡くなったという報道がされていた。なんともやりきれないことだ。まさか、いつも食べている給食で、そんな事故が起きるとは、誰も思ってもみなかっただろう。ご家族の気持ちを考えただけでも胸が張り裂けそうになる。
どうしてこんな事故が起きてしまったのだろう。私の中にいろいろな推測が浮かぶ。まず、その年頃の子は歯の生え変わりで前歯がないことが多い。嚙もうとして思わずつるんと喉に入ってしまったこともありうるし、あまりにお腹がすいていてがつがつ食べていたのかもしれない。今は様々な事情で毎食ご飯を食べられない子が増えていると聞く。そういう子は給食をお代わりして食べることで、命を繋いでいるという。万一、そういう事情で事故が起こってしまったのだとしたら、本当に見逃せないことでもあると思う。
「いただきます」「ごちそうさま」の二冊は、まだ子どもを授かる前から購入し、何度も読み返した本である。中身は赤色のラインだらけ、表紙もぼろぼろ、手垢だらけという汚さになりさがってしまったが、この二冊は私にとって間違いなく食のバイブルなのである。
すでに亡くなられてしまったが、著者の小林カツ代氏には、まりこちゃん、けんたろうくんという二人のお子さんがいた。ひと言でいえば、食をとおしての子育てエッセイであるが、彼女のゆずれないモットーが、「食べることが楽しいと思える子」を育てることだった。それは決してぜいたくをすることでななく、普段の慎ましい食卓を家族で囲まれる幸せ、決められた時間に決められた量のおやつをもらうことの大切さと満足感、そういったことを受け入れられる子どもに成長してほしいということなのである。
病気の母親に代わって、兄弟だけで献立をたて、買い物、調理のエピソード、夏休みのお昼の献立、子どもに人気のおやつのレシピ付きの紹介、子どもに任せたい調理のお手伝いなど内容盛りだくさんの二冊。小林カツ代氏の気取らないざっくばらんなおやつケーキ(バナナケーキ、キャロットケーキ)は、ぜひお薦めしたい。
冒頭の事件のその後であるが、このような給食中の事故をふまえ、うずらのたまごを献立から外す地域が増えたそうだ。しかし、危ないものはそれだけではなかろう。ミニトマト、ぶどう、こういうものもすべて献立から外すのだろうか。
よく噛んで、ゆっくりと食べる。教師もいっしょに、まずはここから始まるのではなかろうか。
息子たちが小学生の時、片付けなどの時間を含めると食べる時間が十五分しかなかった。早い子どももいるだろうけど、できれば三十分くらいはとれないものだろうかと思っていた。
楽しいはずの食の時間に、どうかこのような不幸な出来事が二度と起きませんように。




