本日の一冊 「雨の日の午後」
「雨の日の午後」【リーブル】
冨永 佳与子詩
渡辺 洋二絵
このところ、雨続きだ。
ふと、詩を読みたくなって、お気に入りの詩集を手にとった。
この詩人の感性が大好きだ。
ティータイムを楽しみながら、一編読み、ああいいなあ。もう一編、ああ、リラックス。
焼き上がりのクッキーの味みたいに、素朴でありながら、なんとも豊かな気分にさせてくれる。
木の葉
秋は食いしんぼう
森の木の葉を
黄色くこんがりと焼いて……
ぜーんぶ食べつくすと
冬
いちょう
いつ
だれが
切りこみを入れたの?
ひとつも残さず
全部の葉っぱに
今年もまた
秋になっても
見あたらない
犯人も
使ったはさみも……
雨の日の午後
泥んこだからと
おもてにしめ出された猫と
風邪ひきだからと
部屋の中にとじこめられたわたし
窓ガラス一枚はさんで
鼻と鼻をくっつけて
今日の不幸せの度合いを
計りあっている雨の日の午後
作者のあとがきにこう書かれている。
「ふと何かを感じ、言葉で表現することは、人の心に無限の楽しさや、優しさや、安らぎを与えてくれるものでしょうか」
その表現された言葉を受けとる側もまた、無限の幸せを受けとることができるんだと感じる一冊だ。