本日の一冊 「みんなのためいき図鑑」
「みんなのためいき図鑑」【童心社】
村上 しいこ・作
中田 いくみ・絵
このところため息続きだ。なぜなら半年近くも、どうしても、腰を据えた自分の時間が持てないでいるからだ。
はあ……。ため息をついたとたんに、いけない!と撤回する。ため息をつくのはよくない。
幸運を逃してしまうとあらゆる本に書かれているではないか。
私の幼なじみに、何かにつけ、ため息をもらす男の子がいて(小学校からの彼の癖である)彼がため息をつくたび、自分のことはさておき、もう!それ、やめなさいよっと私は怒ってしまう。
そんなときに久々出会った、村上しいこ氏のこの作品。真夜中に吸い込まれるように読んだ。
たのちんこと田之浦嵐太の班は、星合小雪、宮村孝四郎、新開七保、そして保健室登校をやめられない加世堂ゆらの五人である。授業参観に向けて、班ごとに○○図鑑なるものを作ることになったが、たのちんの班だけがなかなかまとまらない。保健室登校の加世堂ゆらの前で、思わずため息をもらしたたのちんに絵の得意なゆらは「ためいきこぞう」のイラストを描いてくれる。困ったときの相談相手になるかもといわれ、そのイラストをもっていたたのちんの前に、いきなりイラストの中から、ためいき小僧が現れる。ためいきこぞうは、ためいきをつくときにはいろんな感情があるのだと教えてくれる。
ためいきこぞうのおかげで、「ためいき図鑑」を作ることになった、たのちんたちの班だが思いがけないトラブルが起きる。ゆらに絵を描いてもらうことで保健室を卒業してほしいというたのちんの願いに反し、小雪は自分が描くと言い張る。ゆらに描く気があるのなら、自分で教室に来るべきだと主張してやまないのだ。一見意地悪ともとれる小雪の発言だが、実はそこには深い理由があったのだ……。
ためいきこぞう。
なんともかわいい。中田いくみ氏の手にかかると、ためいきこぞうは本当にかわいい。
ため息というとよくないものというイメージが強かったが、その後、たのちんたちが取ったアンケートによれば、何かに感動したときも、うれしいときも、安心したときも、ため息は心を伝えるメッセージともいえる。仮に、何か満たされない気持ちを抱えてため息をついていたとしたら、いつかその気持ちを満たしてあげられるように、前向きな気持ちを持ち続ければよい。そういう人がいたら、ため息をつく気持ちに寄り添ってあげられたらいい。とはいえ、横でためいきばかりつかれたら、イラッとくるのは仕方ないか。
ゆらが保健室登校を始めた理由と、母親との関係。これは大きく影響している。
子どもたちばかりでなく、大人にもぜひお薦めしたい優れた児童書と思う。




