本日の一冊 「ぽんこつ主婦のこっそりラクして絶品ごはん」
ぽんこつ主婦のこっそりラクして絶品ごはん
【KDOKAWA】
橋本 彩・著
結婚して主婦歴三十五年。
この数字に改めてゲッと驚いた。こんなに長く主婦をやりながら、知らないこと、できないことが多すぎる。けれど、まがりなりに家族全員元気でこれまで生きてきたし、息子たちも平均以上の体格を備えて成人した。まあまあ栄養価のあるものを作ってきたからだと自分を慰めつつも、夫婦二人の生活になり、実家とお宮との行き来もあれば、最近献立がマンネリ化しはじめていることに気づいた。
家族が不満をもらしたのではなく、自分自身が不満を感じ始めたのだ。
とにかく食事は美味しくありたい。それは決して高いレストランで食事することではなく、ただのお茶漬けにも、おいしいお漬物を添えるとか、おいしいお茶にこだわるとか、そんなことでいいのだ。
そして食事は楽しくありたい。怒ってご飯をかきこむくらいなら食べないほうが消化にいい。
結婚以来、料理本はいっぱい買い込んだが、一、二品作っておしまいとか、読んだだけというのもかなりあった。けれど本書は違う。出てくる料理すべてが作りたくなって、カードに書き、新米主婦にタイムスリップしたかのように、それらを見て作る。出来上がった料理は、父や夫が舌鼓を打って食べてくれている。例えば、揚げないささ身の和風チキンカツや、ナスの肉巻き生姜焼き、舞茸のカキフライ風など、手ごろな材料、すこぶる簡単な調理法でどんどん作れる。白いご飯にも合うおかずだが、お酒のつまみにもなると思う。ということは、やや味付けが濃いめなのだ。酸味を増やしたり、味噌や醤油の量を調節したりしながら、薄味をめざしているが、それでもおいしい献立が満載である。
ちなみに結婚当初、私はだしの取り方さえよくわかっていなかった。が、母は、この情けない娘を無責任にも、習うより慣れろとばかりに放り出したのだ。そのおかげか、料理本を読んで読んでよみまくった。根っからの食いしん坊なので、母の味付けだけは、舌が完全に覚えていたから、自分の味覚を信じつつ作りまくった。
新婚当初、本を見ながら新鮮なエビのカルパッチョもどきを作ったら、夫に「美味しくない!」と言われて泣いたことがある。
―高い献立なのに、なんで美味しくないのよ!バカッ!
ムラムラと湧き上がる怒りは、真実を知ってあっさりおさまった。夫は大のエビ嫌いだったのである。
今、長男が料理に凝っている。
彼らの世代は、スマホが先生である。スマホを開けば、動画付きでなんでも説明してくれる。そのおかげで、彼は最近、チョコレートケーキまで焼いて持参してくれるようになった。
便利な世の中になってきているが、料理本だってすてたものではない。本書のような役立つ本もどんどん出版されているのだから。




