表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縁の本棚  作者: 雪縁
286/306

本日の一冊 「まいごのしにがみ」

「まいごのしにがみ」【理論社】 

             いとう みく・作

             田中  映理・絵

 

 死神のイメージってどんなものだろうか。

 タロットカードに描かれたおどろおどろしい死神のイメージが強いのだけれど、この作品に出てくる死神は、なんともヘタレのおじさん。


 ある日、公園で遊んでいるぼくに、黒い服を着て、眼鏡をかけたやせっぽちのおじさんが道をたずねてきた。

 差し出された名刺には、こう書かれている。

『有限会社 死神本舗 水先案内課 1024号』

 裏をひっくり返すと

 〈安全・快適にあの世へとおつれいたします〉

 要するに死神らしい。けれども、今日行く予定の家がわからないらしいのだ。

 イカ公園の近くというから、ぼくの家の近所ではあるけれど。知らない人についていくのはよくない。ましてや死神はいい人とは思えない。

 案内をしぶるぼくに、死神は涙目で、自分の実情を語り始める。

 自分は情にもろすぎるのだと。

 たとえば、父親の臨終の場で、小さな子どもが泣き出したりすると、自分まで泣けてきて、連れていくのを思いとどまるらしいのだ。

「いいことしたんだよ!」

 ほめるぼくに、力なく首をふる死神。死神としての営業成績は最下位らしい。

 何をしてもみんなよりすごいことなんてひとつもないぼくと、どこか似たもの同士のような気がする死神。

 他人事とは思えなくなったぼくは、死神をイカ公園まで案内することにする。死神は、ぼくの道案内の仕方が素晴らしいとほめてくれる。

 行く先々で、死神は道端のノゲシを生き返らせ、言葉を交わす。けなげに咲く道端の花に心がいっぱいになってしまうという死神。けれども自分の担当は、あくまで人間だといいきる死神に、道案内をするぼくの気持ちがぐらつき始める。ぼくが案内をしたせいで、ご近所のだれかが亡くなってしまうのだ。

 涙ながらに断るぼく。

「わわっ!いけません。涙など」

 情にもろすぎる、この死神にとって、人の涙を見ることは何よりもご法度なのだった。


 いったん別れたぼくと死神だったが、その夜、ぼくのまくらもとに、死神が現れる。

 実は、ぼくの近所で、死神が連れていくはずの人とは……。

 予想外のオチ。

 そしてほっこりと心温まるエンディングに読後感は上々。


 わずか六十ぺージのうすい児童書だが、大人も子どもも楽しめることまちがいなし。

 道案内を死神にほめられたぼくの未来と、

 野辺の花に心を寄せられる死神の未来に、

 乞うご期待!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  情け深い死神さん。  雪縁さんの紹介を読んだだけでほんわかしてきます。  とところで。  死神が連れていくはずの人とは……。  いったいだれなんでしょう?  気になりますねえ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ