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縁の本棚  作者: 雪縁
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本日の一冊 「給食アンサンブル」

「給食アンサンブル」【光村図書】 

        如月 かずさ・作


 新型コロナ感染防止のために、かなり長い間、学校が休校となっていた。

 最近やっと本格的に、学校が再開し、小中学生たちの授業や給食の様子などが、テレビで映し出されていた。

 三密を避けるため、少人数で距離をおいて座る。給食もそのままそこで、ひとりでもくもくと食べる。

 その様子には、少し前までグループで給食を食べていたころの賑やかさは、かけらもない。

 ひたすらだまって食事を口に運ぶだけ。ひとりの女の子が、あとでテレビの取材に答えていた。

「給食は美味しかったけど、寂しかった」

 そうだよ!

 給食はただ胃袋を満たすためにあるんじゃない。一緒に食べるという行為を持つことで、友達とのコミニュケーションをはかる勉強の場でもあると思う。


 小中時代を通して、給食時間は賑やかだった。

 グループで向かい合い、男女関係なくおしゃべりしながら食べる。時々お調子者が、牛乳を一気飲みしてふいたりすると、クラス中からどっと笑いが起きる。

「残すんならおかずくれ」「ジャムだれかいる?」

 気安く、だれかれの食器がグループ内を回る。

 アルミでできた安っぽい食器。先割れスプーン。

 冷えたコッペパンや、甘ったるいジャムや、ときに嫌いなメニューもあったおかず。

 お世辞にも美味しいとは思えなかったけれど、給食の時間は楽しかった。

 こんな時間があったから、小中時代のおさななじみは、わけもなく懐かしく感じるのかなと思ったりもする。


 本書は、美貴、桃、満、雅人、清野、梢ら六人の中学生の揺れる心が、給食によって変わっていくアンサンブルストーリー。

 一番最初に登場する美貴。美貴自身は、決して誰にもあかさないが、実は有名なお嬢様学校から、親の事情で祖母の家の近くの公立中に転校してきた。

 新しい学校でなじめないものは給食。なぜなら以前の学校の給食メニューは、ホテルの有名シェフが作ったものであり、その雰囲気も貴族の晩餐会のように上品で優雅だったからだ。

 有名シェフの給食なんてあり? そう思いたくなるけれど、実はあるらしい。他の本でも読んだが、私立のお嬢様学校の給食は、クロスの色や食器に至るまで吟味され、ましてやメニューときたら、デザート付きでうらやましくなるほど。そんなところから来れば、公立の給食がすんなりと食べられる方がおかしいのだが、そんな美貴に対し、梢は、みんなの前で辛辣な言葉を吐く。

「お嬢様学校の豪華な給食を食べ慣れてるから、こんな貧乏くさい給食は食べたくないのよね」

 いきなりの出来事に凍り付く美貴。さあ、二人の仲は修復するのだろうか。


 七夕ゼリー、ミルメーク、黒糖パン、アーモンドフィッシュ、カレー、クレープ。

 だれもが一度は給食で食べたことがあるメニューではないだろうか?

 忘れかけていた給食の味と、不安定な思春期の気持ちを懐かしく思い出させてくれる一冊だ。


 

 

 



               

                                                           

 




 










 


 

 




 


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