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縁の本棚  作者: 雪縁
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本日の一冊 「おそうじをおぼえたがらないリスのゲルランゲ」

「おそうじをおぼえたがらないリスのゲルランゲ」 【福音館】

          J・ロッシュ=マゾン・作

          山口 智子・ 訳


 主婦に限ってのことではないけれど、日々欠かさずそうじができる方を、心の底から尊敬してしまう。

 玄関、トイレ、浴室、洗面所、台所、居間……。そして外回りと、一軒の家の中にはそうじをする場所がはんぱなく多い。くわえて、仕事をしたり、ご飯を作ったり、買い物をしたり、自分だけの時間もどうしてもとりたい。すると、私の場合、いちばん後回しになってしまうのはそうじなのだ。少しくらい汚れていても死にゃーせんと考えてしまう。気にはなるが、あえて目をつぶり、自分に誓う。

 明日やろう。きっと明日やる。

 その誓いがあてになるかどうか、はなはだ自信がないのだが……。

 友人のひとりは、そうじは命と同じくらい大切なもののようだ。

 たとえ、自分に熱があろうと、ご飯のおかずが一品であろうと、子どもたちが泣きわめいていようと、そうじをしないなんて考えられない。だから、彼女の息子たちが小さかった頃から、家の中は、常にちりひとつなく、整然と片付いていた。


 リスのゲルランゲは、りっぱなブナの林の中にある、高い木のまたの、古いカササギの巣の上の家で、十一ぴきの兄弟とおばあさんと暮らしている。

 毎晩、夕食後には、一ぴきの子リスがくるみのからのお皿をかたづけ、木の葉のナプキンをたたみ、もう一ぴきの子リスが、しっぽで家の中を掃く。けれど、ゲルランゲだけはどうしてもしっぽを使ってそうじをしようとしない。何度おばあさんに注意を受けても、ぜったいにいうことをきかない強情なゲルランゲ。ついに彼は、おばあさんから家を追い出されてしまった。

 行くあてのないゲルランゲにオオカミが近づく。オオカミがゲルランゲを食べようとして、まさに口を開けた瞬間に、ゲルランゲはこう言うのだ。

「ぼく、おそうじはおぼえたくないんです」

 それを聞いたオオカミ、食べるのをやめて、親戚のキツネのもとへ、ゲルランゲを連れていく。

「わしはこの国でいちばんえらいオオカミだ。なにもできないリスを食べたところで、みんなの前で大きな顔ができるかね?」

 オオカミはその後もゲルランゲがそうじをする気になるように、あれこれと手を尽くすが、いつも空振りばかりで、キツネに大笑いされどおし。

 最後にフクロウおくさんのもとを訪ねたとき、さあ、ゲルランゲはどうなった?


 掃除をしたがらない子リスを改心させないうちは、食べても無駄だと思う誇り高いオオカミのおかげで、するりするりと難を逃れるゲルランゲ。

 翻弄されどおしのオオカミが、少しばかり気の毒になってくるのが不思議だ。


 続編に「けっこんをしたがらないリスのゲルランゲ」があるそうな。

 年頃の息子をもつ雪縁。これ、ぜひ読んでみたい気がする。



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