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縁の本棚  作者: 雪縁
264/306

本日の一冊 「金色のキャベツ」

「金色のキャベツ」【そうえん社】

          堀米 薫・作

          佐藤 真紀子・絵


 ひと玉のキャベツ。さて、どう調理しよう。

ロールキャベツ、ポトフ、野菜炒め。いやいや、なにはともあれ、コールスローサラダでしょう。

そんなことを思っていたら、猛烈にコールスローサラダが食べたくなってきた。

とりあえず、サラダのことはさておいて……。


主人公は小学五年生の風香。

塾だピアノの練習だと、両親の期待を受けながら、うんざりしている毎日だ。

そんなある日、父の腹違いの弟にあたる叔父の仁から、畑で収穫したてのみずみずしいキャベツといっしょに、風香あてに手紙が届く。手紙には、自分の働いている野菜農家に、いつでもおいでと書かれていた。迷った挙句に、風香は両親には内緒で、仁に会いに行くことに決めた。


見渡す限りのキャベツ畑。

仁はそこで、妻の穂波と、彼女の父親である重さん、アルバイトの学生や、会社員の農家研修生、外国からの研修生たちとともに働いていた。そして、風香と同い年でありながらも、キャベツ畑のことをよく理解して、熱心に働く少年、拓也。彼のかげりのある性格が、風香には気になる。

   

仁にひと目会いたかっただけの風香だったが、重さんが両親を説得してくれて、数日間とどまることになる。その間、風香は、穂波さんに借りたTシャツにジャージ姿、首には白いタオルを巻いたいでたちで、キャベツ農家の作業を手伝うことになるのだった。


拓也と受け持つ仕事はキャベツを詰める箱の組み立て。単調な作業だが延々と半日近くこなさなくてはならない。そして穂波さんと準備する、働く人みんなの三度の食事。拓也はコールスローサラダをこしらえることが、抜群にうまいのだ。


 大地をふみしめ、汗を流す風香の中で、何かが少しずつふっきれていく。そして初めて知る拓也の過去。


 仁の農場で働く最後の日。

 風香は早朝のキャベツとりに拓也や穂波さんとともに向かう。

夜のように暗く、濃い霧がたちこめるキャベツ畑。しかし、日の出とともに霧は晴れ、明るさをました空の下で、黄金に輝くキャベツが、風香の目の前に現れる。

―東京に帰ったら見えるかもな。風香のまわりにある、たくさんのキャベツ畑。

 仁が残す風香への言葉が印象深い。


 何かに行き詰まりを感じたとき。

 自然の懐は、素の自分にリセットしてくれる。

 お金では買えない豊かさを与えてくれる。

 作者は農業を営みながら、児童文学作家として活躍中。巻末のコールスローサラダのレシピがうれしい。


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