本日の一冊 「とうちゃんとユーレイババちゃん」
「とうちゃんとユーレイババちゃん」【講談社】
藤澤 ともち作
佐藤 真紀子絵
とにかく面白い! 引き込まれるように読んだ。
最近のちゅうでん児童文学賞を受けた作品であり、これがデビュー作とは、どれだけ未来に可能性を秘めた作家さんであろうかと思う。
主人公ぼくこと小野寺優也は「とうちゃん」と大の仲良し。とはいっても、「とうちゃん」は父ちゃんではなく、優也の母の兄の透也さんのこと。つまり優也のおじさんである。
優也の家族は、シングルマザーの母と、とうちゃんと優也と、そしてもうひとり、なんとユーレイになったババちゃん。ユーレイババちゃんの存在は、ほとんどぼくにしかみえないのだが、心残りが多くて成仏できないらしい。
お弁当屋さんで働く、鈴木さんという女性に恋をしたとうちゃんは、浮かれ調子もはなはだしい。
「バカだねえ」と呆れながらも、いっしょにおどったりするユーレイババちゃんはもっと楽しい。
鈴木さんの息子が、優也と同じクラスの健龍だとわかり、二人の仲が急速に深まっていく。
友情、初恋、離婚、再婚、失恋、ともすれば重くなりがちのテーマが、何とも温かく、コミカルなタッチで展開されていく。
「とうちゃん」「ユーレイババちゃん」「健龍」「お母さん」そして優也の新しいパパさんまで、人物が本当によく描かれ、好感がもてた。
たくさん笑って、胸がキュンとなる一冊であった。




