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縁の本棚  作者: 雪縁
237/306

本日の一冊 「さよならは霊界から」

「さよならは霊界から」【旺文社】

         中島 信子・作

         大和田 美鈴・絵

 

 長男が五年生のときだった。友人であるTくんのお母さんが、乳癌で亡くなった。

 同じく、次男が六年生のとき。友人のYさんのお母さんが、子宮癌で亡くなった。

 お二人とも、仕事のかたわら、PTA活動にもすすんで参加され、Yさんのお母さんは看護師という激務にもかかわらず、子どもたちのために読み聞かせサークルの活動も積極的にこなしていた。


 癌の宣告をうけてしばらく闘病生活をされていたが、まだ小学生の子どもたちがいるのに、不治の病に冒されてしまった彼女たちの無念はどれほどのものであっただろうか。日一日と忍びよる死のかげと向き合わねばならなかった辛さは、想像するにあまりある。

 ただひとつの救いは、そんな中で少しずつ、少しずつ気持ちの整理がついていくことかもしれない。


 けれども世の中には、容赦なく襲ってくる悲劇もある。交通事故や犯罪に巻き込まれたり、心臓発作や脳疾患による、あまりにもあっけない突然の別れ。死んでも死にきれないとはこのことかもしれない。ましてや、小さい子どもがいたらなおさらのこと……。


 この物語の主人公、谷田貝やたがいみきは小学六年生。

 弟の守と、おとうさんとマメマルの四人暮らしだ。

 マメマルってペット?と思われた方のために。

 マメマルはみきと守のおかあさん。太っていて、足が短くて、まんまるで、豆大福に目がないことから、こんなあだ名で呼ばれているのだ。

 家事は手抜き、なんでも大ざっぱだけれど、日だまりのようなマメマルを中心に、幸せな毎日を過ごしていた谷田貝家。しかし、ある日とつぜん不幸が襲う。

 おとうさんが交通事故で亡くなってしまったのだ。寂しさを胸にしまいこみ、食欲だけは落とさず、変わらぬ持ち前の明るさで、外で働き始めたマメマル。


 ある日、みきが学校から帰ると、玄関と台所の間に、買い物から戻ったばかりのマメマルが寝ていた。

声をかけても、揺り動かしても起きないマメマル。みきの中に不安がよぎる。

 もしかして、死んでしまったのでは……?けれども、マメマルはちゃんと目覚める。

 しかし、何かがおかしい。

 スッスッと宙に浮くような歩き方、冷たい手、二人のことをちゃんづけで呼んだり、おいしいおやつを作ってくれたり、とつぜん両家の祖父母を呼んでみたり、さらに驚くことには、みきと守に学校を休ませ、ディズニーランドに連れていったりもする。その一方で、マメマルは夜遅くまでかかって、みきたちに四冊の生活こまごまノートを書き残したりもするのだ。

 マメマルとの永久の別れを直感するみき。

 そしてちょうど一週間がたって……。


 母親の子どもへの愛情がひしひしと伝わってくる名作である。



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