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縁の本棚  作者: 雪縁
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本日の一冊 「大きい1年生と小さな2年生」

「大きい1年生と小さな2年生」【偕成社】

            古田 足日・さく

            中山 正美・え


 小学生のころ、クラスで身長の順番に並ぶと、私は後ろから二番目くらいだった。

 いちばん背が高いのはTくんという男の子。色白でハンサム。でも、その堂々たる体格に似合わず、彼はかなりの泣き虫だった。

 一度、給食の用意をしていて、Tくんとぶつかったはずみに、手にもっていたミルクを頭からかぶせてしまい、大泣きされたことがある。

 以来、この本を読むたび、どうしても私の中では主人公の男の子とTくんの面影が重なってしまう。


おがわまさやは小学校の一年生。三年生にまちがえられるくらい、背丈は大きいのに、てんでこわがりやで、登下校の道さえもひとりきりでは通れない。

 二年生のみずむらあきよは、背丈こそ小さいけれど、勝ち気で負けず嫌い。なかなか背が伸びてくれないことに、大きなコンプレックスを抱えている。

 そんな二人が出会い、まさやは常にあきよに手をひかれて登校するようになる。

 どうしたら、あきよみたいに強くなれるんだろうか。まさやはこっそりあきよを観察する。

自分がチビであることを気にしているあきよは、そのことに触れられると、相手が上級生であろうが男子であろうが、容赦なくケンカしてしまうようだった。


 ケンカしても涙ひとつ見せたことのないあきよだったが、あるとき、ケンカのあとで、苦労の末に摘んだホタルブクロの花が、グジャグジャになっているのを見たとたん号泣する。

そのすがたを見たまさやは決心するのだ。

「泣かないで。ぼく、あきよちゃんに、きっとホタルブクロをとってあげるよ。持ちきれないほどいっぱいね」

 人一倍こわがりのまさやが、あきよのために少しずつ、少しずつ強くなっていく。そして、そんなまさやのすがたは、あきよに、背丈が小さくても、自分の存在がまさやに大きな影響を与えているという確かな自信を持たせてくれるのだった。


 小学生のころ、学生のころ、三十代のころ、そして最近と、いろんな年代でこの本を読んできたが、子育てを終えて読んだ今回がいちばん、まさやとあきよ、お互いの気持ちに共感できた。

 もし、あきよがいなかったら、まさやは怖がりやをなかなか克服できなかっただろうし、まさやがいなければ、あきよもいつまでもチビだというコンプレックスを持ち続けたままだっただろう。


 お互いの存在が、お互いを良い方へと導いていく。

 長い人生の中でよくあることだが、そういうふうに巡り会えたことは、本当に感謝すべき出会いなのだと思う。

 大きい1年生と、小さな2年生の間に交わされる純粋な友情。

 年代を問わず、ほのぼのと優しく、さわやかな気持ちにさせてくれるこの物語は、今は亡き古田足日氏のロングセラーの名作である。


 





 









 



 


 









 



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