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縁の本棚  作者: 雪縁
23/306

本日の一冊 「妖怪アパートの幽雅な日常」シリーズ

「妖怪アパートの幽雅な日常」シリーズ【講談社】

            香月 日輪作


 シリーズものには魅力ある作品が多い。けれど、途中の巻が売り切れだったりして、そこで挫折してしまうときもある。

 香月日輪「妖怪アパート」シリーズは、本の帯に「妖アパ中毒の大人続出」と書かれているとおり、読めばヤミツキになりそうな作品だ。この作品は、本屋と図書館ハシゴして、何とか全巻を読破できた。


 主人公の俺こと稲葉夕士は、条東商業高校の二年生。

 両親を亡くし、親戚の家で中学三年間を過ごし、学生寮のある高校に入学できて喜んだのもつかのま。その寮が火事で全焼となり、何とか行き着いた先が、このおんぼろアパートの「寿荘」。正真正銘の妖怪アパートだった。

 黒坊主の大家。賄いの女性は手首だけの幽霊のるりこさん。妖怪託児所勤務のまりこさん。実母からの虐待で死んだ子どものクリと、それを見守る犬のユーレイのシロ。まだまだ書き連ねたらきりがない。そして妖怪たちだけでなく、住んでいる人間たちもまた、バラエティに富んだ、非常に魅力あふれる仲間たちなのである。


 アパートに住む、さまざまな妖怪と人間たちとかかわりながら、夕士は小さな世界にとどまっていた自分の常識を打ち破りつつ、自己成長を遂げていく。


 夕士のドラマを楽しめるのはもちろん、このシリーズでぜったい、ぜったい見逃せないのが、料理上手なるりこさんが、住人たちにふるまう料理の数々。

 例えば、細かく砕いた氷の上に桜の葉をしき、その上にイカとホタテのさしみと共に、桜鯛のさしみを盛りつけ、桜の花を添えた一品。タンポポの花びらを散らしたかぶの琥珀蒸しなど、その味付けは申し分なく、季節感あふれる盛りつけとともに、住人たちの胃袋を満たしてくれる。

 生前、小料理屋をもつことが夢だったるりこさんは、妖怪になってその夢を果たしている。料理をほめると、もじもじして、手首をからませるのが可愛らしい。

 このるりこさんのごはんだけの番外編もある。

「妖怪アパートの幽雅な食卓―るりこさんのお料理日記」もいつか読んでみたい。


 妖怪たちと人間とのふれあいを描いた香月作品は多い。が、香月氏はもうこの世にはおられない。

 新しい香月作品をみられないのは、心の底から残念でならない。



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