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縁の本棚  作者: 雪縁
228/306

本日の一冊 「もりのへなそうる」

「もりのへなそうる」【福音館】

          わたなべ しげお・さく

          やまわき ゆりこ・え


 長男が五歳くらいのとき。背中におもちゃの刀をさして、ツバの広い麦わら帽子をかぶり、アンパンマンのリュックを背負って、「タンケンにいってきます」という。すると、ふだんから、お兄ちゃんの金魚のふんである次男もすかさず、「ぼくもタンケンにいってきましゅ」と、背中に刀をさしながらいうのだ。

タンケンならば、母はついてはいけない。車の走るところへはぜったいに行かない・ゴミは持ち帰るとしっかり約束させて、お菓子を少し持たせて送り出す。喜びいさんで出発する二人。

 おおかた、行き先に心当たりはある。五分程度いったところに小高い丘があり、そこにホコラのようなものがあるのだ。

 案の定、しばらくたって息はずませて帰ってくる二人。

「タンケンした?」

「うん、ネコがいた!」「ネコにお菓子あげた!」

 男の子ってどうしてこんなにタンケンが好きなんだろう。

 そのころ、よく読み聞かせした「もりのへなそうる」をあらためて開いて、何ともほっこりした気持ちになった。


 五歳のてつたと、三歳のみつやの兄弟。

 もりの中でタンケンごっこをしていると、大きなタマゴを見つける。赤と黄色のしまもようのとてもきれいなタマゴ。

いったんかくして翌日行ってみると、たまごのあった場所にいたのは、カバのような顔、きりんのように長い首、背中からしっぽにかけて、とげとげのついたみるからにへんてこなどうぶつ。そのどうぶつが自分はへなそうるだと名のるのだった。


 まだよく口がまわらない弟のみつやは、たまごを「たごも」、どうぶつを「どうつぶ」、しっぽを「ひっぽ」、あたまを「あぱま」と口にしてはてつたに訂正され、へなそうるは、うへん、うへんと笑う。


 かくれんぼの場面で、「このゆび、たあかれ」と指をだすてつたに、「ぼか、そのゆびたあべる」と元気よくこたえ、二人を笑わせるへなそうる。

オニになって、「いーち、にい、いーち、にい……」としか数えられず、待ちきれず出てきた二人を「みつけた!」と、うれしそうに指さすへなそうる。

 大きな事件は何も起こらないが、小さい読者は安心して、あたかも自分が、もりの中で、へなそうると出会っているかのように想像しながら読めると思う。


 てつたとみつや。やがて成長した二人が、お酒を飲み交わしながら、幼い日々の想い出を話すときが来るだろうか。

 二人の心の中に、かわいい恐竜、へなそうるは生き続けてくれるだろうか。


 そういえば、以前、長男の誕生日に宛てた次男のカードにこんな言葉が書かれてあったっけ……。

「小さいころ、ぼくの遊びの原点はいつもお兄ちゃんだったね。とても楽しかったよ。ありがとう」

 思い出して何だか、胸がキュンとなった。


 

 


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― 新着の感想 ―
薄く切ったイチゴに蜂蜜を垂らしたサンドイッチ、ほぐしタラコ入りおにぎり、作りましたとも…。
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