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縁の本棚  作者: 雪縁
224/306

本日の一冊 「かお かお どんなかお」

「かお かお どんなかお」【こぐま社】

            柳原 良平・さく


 かおというもの。

 目がふたつ、鼻がひとつ、口がひとつ。

 すべての人間に与えられた同じ条件。ひとつひとつのかおのパーツが、そのときどきの感情によって、形を変えるのだから、こんなにふしぎでおもしろいことはないだろう。


 息子たちが赤ちゃんのころ。当時は育児に無我夢中で、赤ちゃんの心理など考えるゆとりもなかった。

 後になってわかったことだが、赤ちゃんは、生まれてまもないころから、人の表情を読み取れるということだ。

 とりわけ、いちばん身近な存在の母親。母親の優しい笑顔や声かけで、赤ちゃんの心は平穏に保たれる。が、もし、その母親が表情をなくしてしまったらどうなるのか。赤ちゃんは最初、自分の方から一生懸命に笑いかけたりするのだが、それでもなお、母親が無表情だと、ストレスに耐えかねて、泣き出してしまうらしい。

 また、生後間もない長男を、祖父があやしていたときのこと。

 長男はその動きを目で追い、祖父の表情を真似するようなそぶりもみせていたが、赤ちゃんは本能的と言ってよいほど、人の顔を好んで見るらしい。そして笑ったり悲しんだりする表情の変化に反応しがちだと、いろんな実験の結果がまとめられているようだ。


 そんな好奇心旺盛の赤ちゃんといっしょに読んでみたい絵本が本書。

 「かお かお どんなかお」というタイトルどおり、ページをめくると、わらったかおや、ないたかお、おこったかお、ねむったかお、たくましいかお、こまったかお、あまーいかお、からーいかおと、出てくる、出てくる、どんどん出てくる。

 かおのかたちも、かおの色も、そのときどきの感情によって、青くなったり、赤くなったり。四角になったり、まんまるくなったり。それはそれは、ユニークでゆかいな絵本なのだ。


 せんだて、お世話になった恩師が、夫人に支えられて、町を歩く姿を見かけた。

 足どりもすっかりおぼつかなくなってしまっていたが、さらに驚いたことは、顔からいっさいの表情が消えてしまっていたことだった。

 表情をつくるのも、脳の働きあってのこと。

 魂を抜かれてしまったような無表情に愕然としてしまった。

 もし、この世に生きている人たちみんなが、こんなふうに表情をなくしてしまったら……想像しただけでもぞっとする光景である。


 表情豊かな人は、いいかえれば、感性の豊かな人ともいえるだろう。

 今さら、美人の顔にはなれないけれど、たとえ、オカメと言われようが、年を重ねてもいつもやわらかな表情、豊かな表情をたたえた女性であり続けたいと願っている。




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