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縁の本棚  作者: 雪縁
223/306

本日の一冊 「くだもの」

「くだもの」【福音館】

       平山 和子・さく

          

 くだもの。

 季節ごとに味わうくだものは、老若男女問わず、私たちの気持ちを豊かにさせてくれる。

 ましてや、初めてくだものの味と出会う赤ちゃんや小さな子どもは、興味しんしんにちがいない。

 前出の「おにぎり」は、平山ご夫妻の作品だったが、これは、奥様の和子氏の作。

 ページを開くと左半分には、まるごとのくだものが。右半分には、それを食べやすくカットしたものが、フオークに刺して差し出され、さあどうぞという言葉とともに繰り返し描かれている。


 姉が贈ってくれたこの絵本は、けっこう早くから長男とくりかえし読んでいた。

 たとえば、長男の大好きなぶどう。

 ガラス皿に入れて、さあどうぞと描かれている。長男はちっちゃな指を伸ばし、ぶどうをつまんだ気分でいる。

「ゴボウ、シュキ!」

 ことばを覚えるのが、わりと早かった長男。なのに、自分の好物のぶどうだけは、どうしてもゴボウと言ってしまうのが、おかしく不思議だった。


 すいか、もも、ぶどう、なし、りんご、くり、かき、みかん、いちご、ばなな。

 本書に出てくるくだものは、どれもこれも、みずみずしくて、まるで写真のように本物そっくり。

 これを単なる絵本で片付けてしまうには、あまりにもったいない。

 まさに、大人のための画集として紹介されても、なんら不思議でないすばらしさだ。


 余談になるが、おいしくても食べ過ぎるとおなかをこわしかねないのがくだもの。

 夜にすいかを食べるなとか、桃は新しくないとだめだとか、バナナは半分しかだめだとか、幼い頃の私は、しょっちゅう、両親に制限をかけられた。きっとおなかが弱かったせいかもしれない。

 だからかもしれないが、私は、息子たちには、夜でもすいかやなしを食べさせたし、それが原因で、彼らがおなかをこわしたことは、いっさいなかった。


 私が大好きなあるエッセイストが、こんな想い出を綴っている。

 幼いころの家の行事として、一年に一度、贅沢の日と称し、ありとあらゆるくだものをお店から配達してもらい、夕飯はぬきで、そのぶん、おなかいっぱいにくだものを食べるというのだ。

 翌日、下痢をすることがあっても、それは一過性のものだから、親もおおらかに構えていたという。

 うわあ、なんという気っ風の良さ。

 親子そろって、口のまわりも、両手もベタベタにして、夕飯がわりにくだものにかぶりつく想い出は、生涯忘れられないだろうと思う。


 ながめるだけで、くだものの魅力を、存分に紹介してくれる、この絵本。

 あなたひとりでも、お子さんやお孫さんといっしょにでも、さあ、どうぞ。


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