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縁の本棚  作者: 雪縁
209/306

本日の一冊 「くしゃみ くしゃみ 天のめぐみ」

「くしゃみ くしゃみ 天のめぐみ」【福音館】

              松岡 享子・作

              寺島 龍一・画


 今年の初詣に参拝していたときのこと。

 息子と並んだわたしたちの前に、ひとりのおじいさんがいた。

 パン、パンと拍手を鳴らす度に、おならがブッ、ブッ。一礼してブー。元に戻ってブブー。

 ちらりと息子を見やると、くちびるをひくつかせて笑い出しそうになるのを懸命にこらえていた。

 父から聞いた、私の母との新婚時代の話。

 眠くてたまらない母が大あくびしたはずみに、がくっとあごがはずれて、腰がぬけそうなほどにびっくりしたそうな。マンガのような場面を想像して、母には悪いけれど、父と大笑いしてしまった。

 くしゃみ、おなら、あくび、いびき、しゃっくり。

 本書には、どうしようもない、人間の生理的な現象のおかげで、大成功した五編の昔話が収められている。


 表題作「くしゃみ くしゃみ 天のめぐみ」

 むかしむかしの、そのまたむかし、山と山とにかこまれた小さな村に、「くしゃみのおっかあ」とよばれる、すごいおばさんが住んでいた。

このおばさんのくしゃみの威力といったら、寝ている間のくしゃみで、天井や屋根をふきとばし、人はもちろん、牛や馬までふきとばしてしまう。

 おばさんの息子の名前は「はくしょん」

「初太郎」と名付けるつもりが、届け出のときにくしゃみをしたせいで、天井までふきあげられたお役人が戸籍帳に「はくしょん」と書きながら落ちてきたからである。

 そのはくしょん、年頃になって独り立ちしようと決めた。そこでおっかあにくしゃみをためてもらい、遠くにある天狗山の向こうの村までふきとばしてもらう。飛ばされたはくしょんが落ちたのは、耳が聞こえず、口もきけない娘をもった長者の屋敷の庭だった……。


 雪縁の大好きな「梅の木村のおならじいさん」

 むかしむかし、あるところに、それはそれは仲の良いおじいさんとおばあさんがいた。働き者で気だての良いおじいさんだったが、たったひとつ困った癖が……。それは食事前になると、音といい、匂いといい、天下一品のおならを落とすことだった。あるとき、山で不思議な生き物ズーイグルッペと出会ったおじいさん、なんでも願い事を叶えてくれると言われ、山に狩りに来られるお殿様の案内をしている間だけおならをとめてくれるように頼む。以前におならを止めたいという願いを叶えて、おじいさんの体調が悪くなったのを知っているズーイグルッペが考えたこととは……。


 他にも、大あくびをしている間に口の中からすずめが入り込んで、おなかに巣を作ってしまう男の話や、いびきが凄すぎて雷さまに見込まれてしまう男の話など、どれもフッと笑ってしまうものばかり。


 くしゃみ、おなら、あくび、いびき、しゃっくり。

 人を笑わせる力をもつこの生理現象、人間にとって、まさに天のめぐみなのかもしれない。


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