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縁の本棚  作者: 雪縁
200/306

本日の一冊 「うぐいす」

「うぐいす」【小峰書店】

         安房 直子・作

         南塚 直子・絵


 つい二、三日前のことである。

 家の近所にある八幡様の前を通りかかった際に不意に頭の上から聞こえてきた。

 ホー・ホケキョ、ホー・ホケキョ。

 あっ、うぐいす? どこどこ?

 声の主をさがそうと上を見上げ、ぐるぐると見まわす。けれど、まだつぼみもかたい桜の木が、四方八方に枝をさしのべているだけで、どこにいるのやらさっぱりわからない。

 あたりを通るひとかげはなく、まるでうぐいすが私のためだけに鳴いてくれたような気がして、うれしくてたまらなくなった。

「上手、上手。どうもありがとうね」

 人目のないのを幸いに、木の枝を見上げたまま、思わずそう返してしまった。


 うぐいすの別名は「春告鳥」

 うぐいすは上手に鳴けるようになるまで、かなり努力している。むかし、実家の裏山からホケッホケッと奇妙な声が。数日後、ケキョ、ケキョが出始め、やっとうぐいすの猛練習だとわかった。

 練習の成果をご披露したいな。あのうぐいすはそう思って、だれかが通るのをひそかに待っていたのかもしれない。


 ずっと以前、NHKで、女優の日色ともゑさんが、この「うぐいす」の物語を朗読していた。

 彼女の読み語りが最高であることはまちがいないが、軽やかな物語に思わず惹き付けられてしまった。


 森の中の古い病院。年とったお医者さんと、そのおくさんである年とった看護婦さんひとりきりの、とても小さな病院には、「みならい看護婦さんぼしゅう」のはり紙がしてあった。

 ある日、とても小柄な若い娘が看護婦さんになりたいとやってきた。その娘は以前に足をけがして、こちらのお医者さんにお世話になったので、今度は自分が助けてあげたいとやってきたのだ。

 娘はくるくるとよく働き、本当に愛らしい声でよく笑った。歌も上手で、小鳥の声にあわせてリズムをとりながら、いろんな歌を口ずさみ、その歌をお医者さんもおくさんも、患者さんたちもみんながいっしょに歌って、病院じゅうが小鳥のすみかのように、明るくにぎやかになった。


 ところが、森の中から一羽のうぐいすの声が聞こえ出したころから、娘はふっと歌わなくなり、食事もとらなくなり、ある日「行ってきます」と飛び出したきりになってしまった。

 いったい娘はどこへ? 果たしてもどってくるのだろうか。


 色とりどりの花と、可愛いらしい娘と、一羽のうぐいす。

 ぱあっと華やかな表紙が、幸福なラストシーンを予感させる。

 うぐいすの鳴き声に、心ときめく今の季節、ぜひ、手にとってほしい絵本だ。




200冊目の本が並びました。いつもお読みいただきましてありがとうございます。

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