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縁の本棚  作者: 雪縁
199/306

本日の一冊 「料理をたのしむ私の方法」

「料理をたのしむ私の方法」【三笠書房】

             吉沢 久子・著


 とつぜんにふってわいたご縁にまかせ、大学卒業後すぐに結婚してしまったので、それまで家事などろくにしてこなかった私にとっては、毎日が修行の日々となった。

 とりわけ料理。今なら、スマホのボタンひとつで、作り方のいろんな情報を受け取れるが、当時は母親に電話するか、料理本を読むこと。それ以外方法がなかった。

「あのね~きょう、あさりのお味噌汁を作りたいんだけど、あさりって水から、お湯から?」

「豚肉のしょうが焼き作りたいんだけど、ショウガがなかった~どうしよう?」

 新婚当初は、毎日くだらないことばかり電話していたと思う。

 当時は本屋に行けば、ソク料理本のコーナーヘ。

 いちばんの先生は、もう亡くなられてしまったけれど小林カツ代さん。そして本書の作者、吉沢久子さん。吉沢久子さんは九十歳を過ぎた今もなお、丁寧なひとりぐらしを楽しまれ、著書も多い。


 本書のタイトルは「料理をたのしむ」である。料理好きな人は、男女を問わずたくさんおられると思うけれど、毎日毎日、朝昼夕と家族の健康や嗜好を考えながら作らなければならない料理という作業。たのしむという境地に達することは、かなり難しいのではないだろうか。

 私自身に関していえば、家事の中でいちばん好きなのは料理。けれどもときにはサボりたくなる。そういうとき、お弁当を買ったり、外食をしたりもするけれど、やはり、ああ、わが家のご飯の方が美味しいなと思ってしまう。そしてごはん作りが楽しく長続きするいちばんの秘訣。これは私だけのわがままなやり方かと思っていたけれど、本書にもちゃんと紹介されていた。

『自分が食べたいと思うものを作る』

 家族の胃袋の心配よりも先に、自分が何を食べたいかを考えるというもの。これはたしかに効果バツグンである。ただし中高年まっただなかの近ごろでは、いくら肉料理が食べたくても、夫が昼に肉料理を食べたときにはなるべくがまんして、同じメニューが重ならないように気をつけている。


 本書には、手料理をするにあたっての具体的なヒントやコツがふんだんに紹介されている。

 著者が、とある家の夕食に招待されたときの気張らないメニューの数々と、一家の主婦のもてなしぶり。アポなしで訪れたお宅で出していただいた小さなお寿司の正体など、何度読んでも魅力的なエピソードも語られている。

『さりげなく、味はとびきり』

 今からの季節でいえば、菜の花やグリンピース、早生キャベツに筍や蕗といった四季を味わえる数々の食材。さりげない調理方法でもそういうものをていねいに、美味しく味わうということは家庭料理だけが持つとびきりの味だと著者は述べる。


 さらに必要なこと。それは雰囲気づくりだ。

 どんなに主婦ががんばって作ったとしても、ご飯をいただく家族の心がバラバラでは味気ない。

 長男が高校生の頃。反抗期で機嫌の悪い弟に向かって、めずらしく一喝したことがある。

「ご飯のときに、そんな顔すんな。イラつくんなら部屋で気持ちを落ち着かせてこい!」

 あのころ、自分もイラつく時期だったはずの長男もまた、食卓のいい雰囲気作りに助力してくれていたのだとしみじみ思い出した。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分が好きなものを相手が好きなものと考えるのは とても楽しい食卓ですね 我が家の年寄りを外食に連れて行ったのですが アボカドハンバーガーとかピザをとてもとても喜んでいました でもそんなもの…
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