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縁の本棚  作者: 雪縁
193/306

本日の一冊 「ココロ屋」

「ココロ屋」【文研】

          梨屋 アリエ・作

          管野 由貴子・絵

 

 うすく、可愛らしい装丁の本だ。

「ココロ屋」ってなんだろう?

 そのタイトルに惹かれ、手にとってみた。


 主人公は小学校三年生のひろき。

 友だちのゆうやとは仲よしのはずなのに、すぐにけんかをしてしまう。

 学校は大好きのはずなのに、いつもみか先生に怒られてばかりだ。

 なぜかといえば、ゆうやがすぐに泣くから。泣くほどのことじゃないのに泣きだして、みか先生はひろきばっかりを叱る。

「ココロを入れ替えなさい!」って! こんなこと、もうやってられるか!

 教室を飛び出し、廊下を走り出したひろきは、廊下が際限なく続いていることに気がつく。

そして、廊下の向こうから、何やら近づいてくる。

ココロ、コロコロ、ココロ、コロコロ……。

可愛らしい音とともに近づいてきたのは、土台に四つの木のタイヤを付けた木のドアだった。

そのドアにつけられたプレートには、ココロ屋と書かれている。

 ひろきが、ドアのノブをまわすと、中は意外に広くて、何かのお店のようだった。

 棚にはからっぽの広口ビンが並び、その口から糸でつないだ風船のようなものが浮かんでいる。

「さて、どのココロと取り替えますか?」

 店の主人―ウツロイ博士は、ひろきにそうたずねる。その不思議な店には、実にたくさんのココロがあって、新しいココロと交換の間、今のココロを研究のために預かってくれるという。

 淡いミルク色で、丸っこいハート型の「やさしいココロ」を選んだひろき。

 だが、「やさしいココロ」はノーと言うことができず、そのはがゆさに、ひろきの身体は震えだしてしまう。

 次にひろきが選んだのは「すなおなココロ」。

 しかし、思ったことをすなおに言い過ぎて、みんなのヒンシュクをかってしまう。

 これならぜったい!と選んだのは「あたたかなココロ」

 一見よさそうに見えたが、このココロ、あまりに極端すぎた。自分の勉強道具はもちろん、こんな両親でよければ、恵まれない人たちに譲っていいと言い出すひろきに、両親は怒り出す。

 困りはてたひろき。再びココロ屋を呼び出し、彼の目にとまったものは?


 ココロとは不思議なものだ。

 目に見えず、たしかな形はないものなのに、痛んだり、怒ったり、嬉しがったり。

 私のココロを絵に描いたら、どんな形で、どんな色をしてるんだろうか……。

 長い時間を生きてきて、ココロの色も形もすっかり変わってしまったと思うけれど、生まれたての赤ちゃんのココロは、きっと、一点の汚れもなく、まっ白で、ふわふわとやわらかなものにちがいないと思う。

 ちなみに、長男の名前は「心」と書いて、こころと読む。

 二十六年前に、命名したのは私である。

 


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