本日の一冊 「ココロ屋」
「ココロ屋」【文研】
梨屋 アリエ・作
管野 由貴子・絵
うすく、可愛らしい装丁の本だ。
「ココロ屋」ってなんだろう?
そのタイトルに惹かれ、手にとってみた。
主人公は小学校三年生のひろき。
友だちのゆうやとは仲よしのはずなのに、すぐにけんかをしてしまう。
学校は大好きのはずなのに、いつもみか先生に怒られてばかりだ。
なぜかといえば、ゆうやがすぐに泣くから。泣くほどのことじゃないのに泣きだして、みか先生はひろきばっかりを叱る。
「ココロを入れ替えなさい!」って! こんなこと、もうやってられるか!
教室を飛び出し、廊下を走り出したひろきは、廊下が際限なく続いていることに気がつく。
そして、廊下の向こうから、何やら近づいてくる。
ココロ、コロコロ、ココロ、コロコロ……。
可愛らしい音とともに近づいてきたのは、土台に四つの木のタイヤを付けた木のドアだった。
そのドアにつけられたプレートには、ココロ屋と書かれている。
ひろきが、ドアのノブをまわすと、中は意外に広くて、何かのお店のようだった。
棚にはからっぽの広口ビンが並び、その口から糸でつないだ風船のようなものが浮かんでいる。
「さて、どのココロと取り替えますか?」
店の主人―ウツロイ博士は、ひろきにそうたずねる。その不思議な店には、実にたくさんのココロがあって、新しいココロと交換の間、今のココロを研究のために預かってくれるという。
淡いミルク色で、丸っこいハート型の「やさしいココロ」を選んだひろき。
だが、「やさしいココロ」はノーと言うことができず、そのはがゆさに、ひろきの身体は震えだしてしまう。
次にひろきが選んだのは「すなおなココロ」。
しかし、思ったことをすなおに言い過ぎて、みんなのヒンシュクをかってしまう。
これならぜったい!と選んだのは「あたたかなココロ」
一見よさそうに見えたが、このココロ、あまりに極端すぎた。自分の勉強道具はもちろん、こんな両親でよければ、恵まれない人たちに譲っていいと言い出すひろきに、両親は怒り出す。
困りはてたひろき。再びココロ屋を呼び出し、彼の目にとまったものは?
ココロとは不思議なものだ。
目に見えず、たしかな形はないものなのに、痛んだり、怒ったり、嬉しがったり。
私のココロを絵に描いたら、どんな形で、どんな色をしてるんだろうか……。
長い時間を生きてきて、ココロの色も形もすっかり変わってしまったと思うけれど、生まれたての赤ちゃんのココロは、きっと、一点の汚れもなく、まっ白で、ふわふわとやわらかなものにちがいないと思う。
ちなみに、長男の名前は「心」と書いて、こころと読む。
二十六年前に、命名したのは私である。




