本日の一冊 「ターシャ・テューダーの言葉・思うとおりに歩めばいいのよ」
「ターシャ・テューダーの言葉・思うとおりに歩めばいいのよ」【メディアファクトリー】
ターシャ・テューダー作
リチャード・W・ブラウン写真
食野 雅子訳
若くして亡くなられた年上の友だちが、ターシャ・テューダーとその生き方をこよなく愛していた。
何かの折に送ってくれるカードは、ターシャのカード。ターシャが絵本作家としての人生を過ごしたように、彼女もまた、物語を紡いで生きてきた人だった。
彼女が亡くなってしばらくして、この本に出会った。
扉を開いて、まず目に飛び込んできた言葉。それは、
「幸福とは 心が充たされること」
読み進めていくうちに、まるでターシャがそばで語りかけてくれるような感覚になる。
―わたしは、ひとりの時間が好きです。
自分勝手だと思われてもいいの。
子どもが家を出て行き、
二度と一緒に住みたがらないと言って淋しがっているお母さん達。
ちょっと周りを見回してごらんなさい。
やろうと思えばできる楽しいことが、たくさんありますよ。
人生、長くはないんですもの。
うかうかしていると、何もできないうちに終わってしまうわ。
その言葉どおりにターシャは五十六歳から、バーモンド州の山奥で、ひとりぐらしを始めている。
それは、彼女が夢見たナチュラルライフ。飼っている鶏の卵で料理をし、山羊の乳でバターやチーズを作り、野菜、果物、ハーブを採取し、布を織り、縫い物をし、化粧水やクリームも手作りし、その合間に絵を描くといった生活だ。
第三者からみれば、不自由きまわりないと思われる生活も、ターシャにとっては魅力的だった。
ターシャは身の回りのすべてに満足していた。家にも庭にも、動物にも天気にも、バーモンド州のすべてに。
そしてまた、読書についてもターシャはこう述べるのだ。
ー本を読んでいると、情景が生き生きと目の前に浮かびます。映画のように動きがあって、色もついているのよ。本の世界は、わたしにはとてもリアルです。
よく手入れの行き届いたガーデンに、チューリップを胸に抱いたターシャの写真。八十七歳の笑顔が、なんともまぶしい。
今は亡きターシャが生前残した、自分なりの哲学としてのメッセージ。それはソローの名言で代弁されるという。
―夢に向かって自信をもって進み、思い描いた人生を生きようと努力するなら、思わぬ成功を手にするだろう。
ターシャに憧れ、その生き方を愛していた私の友だちは、今ごろ天国で、夢見た生活をしているだろうか……。そう願いたい。




