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縁の本棚  作者: 雪縁
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本日の一冊 「クリスマスがちかづくと」

「クリスマスがちかづくと」【福音館書店】

            齋藤 倫・作

            くりはら たかし・画


 待ちに待ったクリスマス。

 ツリーの飾られた家で、家族そろって食事をし、ケーキを食べる。

 あたりまえのような光景に感じられても、仕事の都合で、クリスマスですら子どもといっしょに過ごせない家庭もきっと多いと思う。

 この作品に出てくる十歳の男の子、セロもそのひとり。

 セロの家は、おかあさんはデパートの仕事に出かけている。クリスマスの繁忙期。ぜったいに休めない忙しさだ。

 おとうさんは、クリスマスには毎年留守。

 お手伝いに来てくれるおばさんは、クリスマスに休めないのがイヤなのか、セロの気持ちなどお構いなしに、終始仏頂面。

 うす暗くなって、ツリーの灯りがチカチカと光り始め、おかあさんの買ってくれたデパートのプレゼントが照らし出されると、セロは、寂しくて寂しくて仕方なかった。


「どうして、おとうさんはいつも冬になると帰ってこなくなるの?」

 何度もはぐらかされた質問を、セロは今年もおかあさんに投げかけてみた。

 すると、おかあさんはこうこたえる。

「ないしょの約束、守れる? 十歳だとまだ無理かな」

 セロは胸をはってこたえる。

「もちろんまもれるよ。十歳にもなるんだ」

 そう。ずっとずっと、クリスマスの寂しさと闘ってきたセロなのだ。真実を知る権利はあるはずだ。

 おかあさんはセロを見つめながらこう言った。

「おとうさんはね、実はサンタなの」


 太ってもないのに。ひげもないのに。たったひと晩の数時間で、世界中を走り回るなんて。セロにはとても信じることができない。

 けれども、秋ころから、出入り禁止のガレージの中に、生きものの気配がしたり、クリスマスが近づくとぱったり帰らなくなるおとうさんが、年あけて、すすだらけのように真っ黒になって、少し太って戻ってくることなど、考えてみれば思い当たることばかり。

 でも、仮にそうであっても、セロはおとうさんにサンタクロースにはなってほしくない。

 世界じゅうの子どもが幸せなクリスマスなのに、自分だけはひとりぼっち。ぜんぜん幸せなんかじゃない! サンタなんでだいっきらいだ!

 すっかりサンタと化したおとうさんに、思いきり、自分の気持ちをぶつけたセロ。すると……?

 ラストは意外な展開が待っている。


 セロの気持ちはよくわかる。

 雪縁の家はお正月がない。ゆっくり寝正月など夢のまた夢。生まれたときからそうであり、息子たちもまた、同じ思いをしてきた。

 けれども、それはきっと天がお決めになったこと。開き直り、来る正月の準備をしている年の瀬だ。


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