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縁の本棚  作者: 雪縁
183/306

本日の一冊 「ねこのくにのおきゃくさま」

「ねこのくにのおきゃくさま」【福音館書店】

         シビル・ウエッタシンハ・作 

          松岡 きょうこ・訳

 

 読み聞かせをしていたころ、三、四年生に向けた秋のおはなし会で、メインに選んだ絵本。

 少し大きめの絵本の表紙に描かれた二人の踊り手は、色鮮やかな衣装に身を包み、なんともエクゾチックな雰囲気だ。


 絵本の舞台は、海をこえた、はるかかなたのねこのくに。

 ねこのくにのひとたちは、だれもがみんな働き者。食べるものも、着るものも必要なものはすべて手作りでまかなう。なんの不自由もない暮らしぶりだったが、それがとてもしあわせとは、だれもが思っていなかった。

 なぜなら、このくにには、音楽もおどりもなかったから。

 ねこのくにのひとたちは、働くことは知っていても、楽しむことは知らなかったのだ。


 そんなある日のこと。

 海のむこうから、みたこともない船がやってきて、みたこともないひとがふたりおりたった。

 彼らは大きな仮面をつけ、目がさめるような色の衣装を身にまとっていた。

 思わず逃げだそうとするねこたちに向かって、そのふしぎなひとたちはていねいにおじぎをして、それから、ひとりが、丸いつつのようなものをたたいて、歌を歌い始め、もうひとりがそれに合わせて、しなやかにからだをゆらしはじめたのだった。

 じっと見ていたねこのくにのひとたちは、だれもがとてもいいきもちになった。

 これが「おんがく」と「おどり」というものだと、ふしぎなひとたちはいい、ねこのくにのひとたちは、二人のおきゃくさんに、ここにいて、もっとおどってほしいとたのみこむ。おきゃくさんもその申し出を喜んで受け入れ、ねこのくにのひとたちは、ますますおんがくとおどりがだいすきになった。


 ついにねこのくにの王さまにも招かれたおきゃくさま。

 仮面をとって晩餐会へと誘われても、なぜかそれだけはできないのだと言う。仮面をとることは自分たちの命の危機につながるといいはるのだ。

 しかし、末長い友人になりたいという王さまの熱意に負け、命を守るという約束つきで、ようやく仮面をはずしたふたりの踊り手。

 さて、その素顔は……?

 果たして約束は守られるのだろうか。


 少々長いストーリーだけれど、結末まで目を離せない。

 おはなし会では最初からおきゃくさまの正体をみやぶっていた子どももいた。


 働くだけ、勉強だけの人生の、なんて味気ないことか。

 うたい、おどり、楽器をならして、心地よさを味わう大切さ。

 ねこの国ならぬ、この世に生きるわたしたちへのメッセージかもしれない。


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