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縁の本棚  作者: 雪縁
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本日の一冊 「なにかのご縁」

「なにかのご縁」【メディアワークス文庫】

           野崎 まど 作 

 

 縁とは本当に不思議なもの。

 自分がたまたま生まれてきた土地や家、両親、祖父母、兄弟、親戚、そして、巡り会った配偶者と授かったわが子。幼なじみ、親友、先生、同僚、先輩、後輩、師匠、近所のおじちゃんおばちゃんに至るまで

ものごころついたころから出会った数多の人々。ずうっとご縁が切れない人もいれば、途中でご縁の糸の切れる人も、再び繋がる人もいる。

 このサイトでの出会いも摩訶不思議。

 何十万という作品、作家たちが登録されている中で、お互いに交流しあえる、ひとにぎりの方たち。

どこかで、目に見えない糸が結びついているのだろうか。不思議でたまらない。


 そんなことを考えているときに出会った本書。

 主人公は、お人好しの大学生、波多野ゆかりくん(男性です)。

 学内でも超多忙な自治会総務部に属し、学生たちから持ちかけられるさまざまな問題を処理している。

 そんなある日、ゆかりくんは学内でふしぎな紐を発見。その紐をたぐってどんどん行ってみると、ついに森の中へ。そこで紐をあやつっていたのは、なんとうさぎ。

 ペットショップで売れないうちに育ちすぎてしまったような、まるまると太った大人のうさぎが、両耳を手のように使って紐を持っているのだった。


 本来、だれにも見えないはずの紐が見えてしまったゆかりくん。

 実はこの紐は人の「縁」であり、なぞのうさぎは、いわゆる「縁結びの神様」だった。

 人の言葉を話し、お茶をすすり、両耳で、縁を切ったり結んだりが自在にできるうさぎと、ゆかりくんの奇妙で滑稽な同居生活が、その日から始まった。


 目が疲れるほどに力を込めて見つめていると、人の背中にぼうっと現れてくる無数の紐。

 縁のある相手との出会いが近づくと、その中の一本がお互いに輝き始めるらしい。

 どんなに片想いしている相手がいても、その相手の縁の紐は何の反応も見せてくれないばかりか、別の人へ縁の紐を伸ばそうとする場合だって少なくない。

 そんな厳しい現実に、ゆかりくんの優しい心は打ち砕かれそうになる。


 縁というものはまた、色恋だけのものではない。

 ひとりの女子学生から放たれる二人の男子学生への縁の紐。これは深い友の絆でもある。

 また親子の縁。

 生まれた時から当たり前にある縁で、他の縁よりは見えにくい。けれどもそれは強靱で、簡単に切れるものではない、強い強いものである。

 そして、いちばん厄介なものは死人の縁。

 お互いの存在があって、縁の紐ができるのに対し、亡くなったものへの縁は、どこへ繋がるかわからない。彼岸か、人ならざるものか、大変むずかしいのだとうさぎは語る。


 縁結びのうさぎの神様とゆかりくんの、お正月のしめなわみたいに太くてスペシャルな縁の物語。

 笑ったり、しみじみしながら、あっという間に読み終えたら、迷わず続編へ。

 本書と出会ったのも、きっとなにかのご縁なのだから。

 


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