本日の一冊 「グッバイ ムカつきベイビー」
「グッバイ ムカつきベイビー」【佼成出版】
花形 みつる・作
山口 みねやす・絵
花形みつる氏が、初めて児童文学界に登場したとき、これまでにない、生きた文体にだれもが惹かれたと思う。私もその一人である。
本書はデビュー作ではないけれど、仲間の仇討ちとばかり、キイロスズメバチを退治しようとする、はちゃめちゃな三人組の物語。
一文一文にドキドキし、ごくりとつばを飲み込みながらページをめくる。
ついにスズメバチが襲ってくる場面では、まるで我が事のように身体をすくめながら、でも文字に釘付けになってしまう。
そんな生き生きとした描写が持ち味の作家なのである。
タケちゃん、あっくん、オレ、そしてヒロミの四人は幼稚園のひよこぐみから数えて、もう七年間の付き合い。
ヒロミは色白むっちりの小太り体型に、やたら長いまつげに縁取られたパッチリお目々、バラ色のほおと、大人受けする顔立ちだが、どうしようもなくムカつくヤツだ。
弱いくせに口だけは達者。その口からは、人の神経を逆なでするようなセリフばかり。おまけにチクリ魔ときたら、いじめられても当然だろう。
そう、ひとけのない神社で、三人はヒロミをいじめる。
そして、逃げたヒロミが、運悪くキイロスズメバチの逆鱗にふれて、今度はハチたちから襲われる羽目になったのだった。
転校を前に、ハチたちからボコボコにさされたヒロミを見て、タケちゃん、あっくん、オレは、そのまま、だまって見逃すことなんてできない。
三人は意を決して、ハチの巣を壊しに出かけるのだが……。
同じいじめでも、絆のあるいじめ。陰湿さはひとかけらもない。
だから、どんなにいじめられても、ヒロミはタケちゃんやあっくん、オレのことが大好きなのだ。
それはそうと、キイロスズメバチの巣。
昨年の夏は、実家にバレーボール以上のものがあった。その模様はまさに芸術的、もし、これが壺だったら、値段をつけて売りたいものだと思ってしまった。
屋根の上の上の方だったから、ハチたちが下に降りてくることはほとんどなく、実家の父はみごとにスズメバチと同居していた。
冬になり、ハチたちがいなくなったら、すぐに巣を撤去しなくてはと思っていたのだが、スズメバチの習性としては、二度と同じ巣を使わないそうな。そしてそのとおり、今年の夏は、ハチの動きはぜんぜんなかった。
けれども、もし、私のような怠けバチがいたら、古巣をリフォームしてまた使いたがるかもしれない。
それを思う度、あのままでいいのかなと、少し不安になってしまうのだ。




