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縁の本棚  作者: 雪縁
174/306

本日の一冊 「グッバイ ムカつきベイビー」

「グッバイ ムカつきベイビー」【佼成出版】

           花形 みつる・作

           山口 みねやす・絵


 花形みつる氏が、初めて児童文学界に登場したとき、これまでにない、生きた文体にだれもが惹かれたと思う。私もその一人である。

 本書はデビュー作ではないけれど、仲間の仇討ちとばかり、キイロスズメバチを退治しようとする、はちゃめちゃな三人組の物語。

 一文一文にドキドキし、ごくりとつばを飲み込みながらページをめくる。

 ついにスズメバチが襲ってくる場面では、まるで我が事のように身体をすくめながら、でも文字に釘付けになってしまう。

 そんな生き生きとした描写が持ち味の作家なのである。


 タケちゃん、あっくん、オレ、そしてヒロミの四人は幼稚園のひよこぐみから数えて、もう七年間の付き合い。

 ヒロミは色白むっちりの小太り体型に、やたら長いまつげに縁取られたパッチリお目々、バラ色のほおと、大人受けする顔立ちだが、どうしようもなくムカつくヤツだ。

 弱いくせに口だけは達者。その口からは、人の神経を逆なでするようなセリフばかり。おまけにチクリ魔ときたら、いじめられても当然だろう。


 そう、ひとけのない神社で、三人はヒロミをいじめる。

 そして、逃げたヒロミが、運悪くキイロスズメバチの逆鱗にふれて、今度はハチたちから襲われる羽目になったのだった。

 転校を前に、ハチたちからボコボコにさされたヒロミを見て、タケちゃん、あっくん、オレは、そのまま、だまって見逃すことなんてできない。

 三人は意を決して、ハチの巣を壊しに出かけるのだが……。


 同じいじめでも、絆のあるいじめ。陰湿さはひとかけらもない。

 だから、どんなにいじめられても、ヒロミはタケちゃんやあっくん、オレのことが大好きなのだ。


 それはそうと、キイロスズメバチの巣。

 昨年の夏は、実家にバレーボール以上のものがあった。その模様はまさに芸術的、もし、これが壺だったら、値段をつけて売りたいものだと思ってしまった。

 屋根の上の上の方だったから、ハチたちが下に降りてくることはほとんどなく、実家の父はみごとにスズメバチと同居していた。

 冬になり、ハチたちがいなくなったら、すぐに巣を撤去しなくてはと思っていたのだが、スズメバチの習性としては、二度と同じ巣を使わないそうな。そしてそのとおり、今年の夏は、ハチの動きはぜんぜんなかった。


 けれども、もし、私のような怠けバチがいたら、古巣をリフォームしてまた使いたがるかもしれない。

 それを思う度、あのままでいいのかなと、少し不安になってしまうのだ。


 

 


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