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縁の本棚  作者: 雪縁
173/306

本日の一冊 「ねこかぶりディズ」

「ねこかぶりディズ」【小峰書店】

           錦織 友子・作

           中釜 浩一郎・絵


 ねこかぶり。

 例えば、だれかに好かれたい、よく思われたいと願ったときに、本性を隠して、うわべをおとなしそうに見せかけること。

 しまった! こんなはずじゃないと後悔してしまっても、一度作ったイメージは、そうたやすくひっくり返せない。

 だれでも一度は経験したことがあるのではないだろうか。


 小林奈々は、とても内気な小学五年生。

 着ている洋服はどれもみんな乙女チック。

 声も小さく、超恥ずかしがり屋。

 だけどそれは、正真正銘、ねこかぶりの奈々。

 本物の奈々は、夏も冬もテロテロのTシャツやトレーナー姿で、そそっかしく、男まさり。声もでかくて、男子たちに言わせれば、『人間とは思えないほどたくましい』女子なのである。


 そんな奈々が、わざわざねこをかぶって、転校生デビューしたのには、理由がある。

 前の学校では、そのたくましい性格ゆえに、いじめられている女子をかばい、よかれと思ってやってきたすべてのことが、実は、おせっかいだと疎ましがられていたのだ。

 おとなしくて何でも他人に頼ってる方がぜったいトク。転校を機に、男子からお姫様扱いされるような女の子になってみせると誓った奈々だった。


 しかし、ねこかぶりゆえに、日々の学校生活でイラッとくることはたくさんあった。

 相手に気に入られるために、顔色をうかがってばかりのみほ。

 自分のペースでしか物事を考えないさおり。

 けれども、奈々はひたすら周囲にあわせて、本来の自分を封印し続ける。

 そんな奈々を、まちがっていると非難するのは母さんと弟ののぼるだ。


 三年生ののぼるは、常に肌身離さず体温計を持つ性癖があるが、新しい環境でも、それを隠そうとはしない。そのために、準というクラスメイトにいじめられているのだが、家族にもだれにも秘密にしていることに、奈々は気がつく。

 のぼるのことが気になって仕方のない奈々。

 ただひとり、本音で話せる鈴木さんに相談したいのだが、奈々に嫌われるのがこわいあまりに、鈴木さんは奈々に対してもそっけない態度をとり続けるのだ。


 奈々の心の中に、次第にある思いがわきあがる。

 かぶっているはずのねこが、身体にぴったりとはりついてしまってぬげなくなってしまってる!

 本当の自分を出さないで、いいかっこすることがそんなに大切?

 ありのままの自分でいたらいけないことなの?

 いいや。そんなことはない!

 ついに、本来の奈々がねこの皮から顔を出す。


 エンディングは爽快。

 素の自分で行動でき、それを受け入れてもらえることのありがたさを実感できる児童書だ。


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