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縁の本棚  作者: 雪縁
168/306

本日の一冊 「万国菓子舗 お気に召すまま」

「万国菓子舗 お気に召すまま」【マイナビ出版ファン文庫】

              溝口 智子・作


 スイーツには不思議な力がある。

 たらふくご飯を食べた後でも、美味しそうなスイーツを見れば、またたくうちに満腹感は消え失せ、別腹の虫がさわぎはじめる。

 通りがかりにスイーツのお店を見かけると、ダイエットしなきゃという意志とは無関係に、足が中へと向かってしまう。

 もし、そこで売られるスイーツが和洋問わずになんでもあって、しかも絶品の味ぞろいだったら? 

 なおかつ、その店主が、若くてものすごいイケメンだとしたら?

 それはもう、一も二もなくその店のファンになってしまうにちがいない。

 本書は、読むだけで、スイーツの美味しさを満喫できる物語。

 スイーツにまつわる小さなお話が、色とりどりのこんぺいとうのように、たくさんちりばめられている。


 その店の名は「万国菓子舗お気に召すまま」。

 九州、博多の天神に近い場所にある。

 ギリシア彫刻のように端正な顔立ちの店主、荘介の菓子作りの腕は折り紙付きで、どんな菓子の注文であろうと引き受ける。

 アシスタントの久美は、幼い頃から憧れだったこの店で働く夢が叶い、今や、店の仕事に心血を注ぐ二十二歳だ。


 長崎市出身の春田が、桃の節句祝いに注文する「桃カステラ」

 自信をなくしかけた女子高校生、相良ひかるに荘介が手ほどきしながら、いっしょに作りあげる 「蓬と桜のロールケーキ」

 若くして夫を亡くした女性、城戸麻美が、夫とともに食べる約束をしていた三つの「サバラン」

 荘介のおさななじみの八百屋店主、安西由岐絵の息子の離乳食からヒントを得てこしらえた、「幽霊飴」

 日々、さまざまなスイーツの注文が届き、そのたびに荘介は目を輝かせて試作に挑み、驚異的な胃袋の久美は試食に励む。


 五月のある日、いちご大福の注文を荘介に伝えた久美は、めずらしく荘介が乗り気でないことに気づく。

 そこからだんだんと明らかにされる荘介の隠された過去。

 次から次へと味わえるスイーツの甘さにうっとりとしながら、読者はふっと荘介の悲しい過去の記憶にひきずられていく。

 荘介の過去に、いったい何があったのか。

 そのトラウマを乗りこえることができるのか。

 荘介の気持ちに寄り添う久美の気持ちが、なんて優しく清々しいことか。


 本書は「小説家になろう・お仕事小説コンテスト」のグランプリを受賞した溝口智子氏の作品。

 一巻読み終えてもまだまだ物足りない読者のために、二巻三巻と続いている。

 生粋の博多っ子、久美の博多弁もなかなか味わい深い。 


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