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縁の本棚  作者: 雪縁
167/306

本日の一冊 「ゴールド・フイッシュ」

「ゴールド・フイッシュ」【講談社】

         森 絵都・作

         

 前回の「リズム」の続編である。

 あれから二年後。

 中学三年生になったさゆきの物語。


 受験生になったさゆきだが、あいかわらず勉強がきらいで、目標も意欲もない。

 弁護士をめざして、ガリガリ勉強していた姉は、高校に入って彼氏ができたとたんに、その夢をなくしてしまったし、「裁判官」を目指して、いい大学まで行った従兄の高志は、ふつうの企業に就職してしまった。

 まわりがどう変わっていっても、さゆきにとって心から好きな真治が、夢に向かって歌を歌っているうちはだいじょうぶ。

 真治からもらったドラムスティックでリズムをとりながら、心を静めるさゆきだったが、ある日そんな気持ちをゆるがす大事件が起きる。


 真治との連絡がとれなくなった。

 そればかりか、真治と懇意にしていた用務員の林田さんや、おさななじみのテツは、真治の事情を知っているのに、自分だけには知らせてくれなかったのだ。

 真治の居場所を確かめようと、おじさんー真治の父親に会ったさゆきは、あることを頼まれる。

 それは、しばらく真治にかまわないでほしいということ。

 中卒の学歴しかなく、ロックの夢だけに明け暮れる真治に、世間の目は厳しく、今回、やっとまっとうな就職先につけるかもしれない絶好のチャンスなのだという。

 さゆきに会えば真治の気持ちはゆらぐ。だからそっとしてやってほしいのだ。

 納得はいかないけれど、すべてをさとったさゆきは、それからというもの、気が狂ったように勉強をしはじめる。

 それは意欲といったものではなく、ただ、ただ、真治のことを頭の中から追いだすために、むちゃくちゃに、没頭するものを探しているのだった。

 そんなさゆきのすがたを見て、家族も、友達も、テツも、大西先生も、林田さんもだれもが心を痛める。


 とつぜん高熱を出して倒れてしまったさゆき。

 そのまくらもとに、テツが、水槽ごと金魚をもって、見舞いに訪れる。

 弱くはかない生きものである金魚。

 ひとたび、世界に出れば、おそろしいあまたの天敵が狙っている。

 それでも……。金魚たちは夢を見なきゃいけないのかもしれないとさゆきは思う。


 やがて、受験の結果も出る。

 新しく芽生えたさゆきの将来への夢。

 そしてやっと届いた真治の手紙。

 さゆき、真治、テツらの未来へのフィナーレはどう締めくくられるのか。

 さゆきに心を寄せる一方で、親目線で彼らを見つめてしまう続編。

 未熟な彼らにハラハラさせられるけれど、若いということの尊さを改めて感じさせられる一冊であった。


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