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縁の本棚  作者: 雪縁
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本日の一冊 「しあわせの石のスープ」

「しあわせの石のスープ」【フレーベル館】

      ジョン・J・ミュース作・絵

      三木 卓 やく


 石でスープが作れるの?

 ばかな! できるわけない。

 たいていの人はそう思う。

 けれども、この絵本に出てくる三人のお坊さんは、石でみごとに美味しいスープを作ってみせた。


 これは中国のお話。

 ホク、ロク、ソーという三人のお坊さんが旅をしていた。

 いろいろな話をする中で、いちばん若いホクがソーにたずねた。

「人をしあわせにするものはなんでしょうか?」

 ソーはこたえた。

「では、これからそれを見つけてみよう」


 そして、ある村へと向かったお坊さんたち。

 この村は、度重なる戦争や、厳しい自然災害によって、食べ物がなくなったり、近隣の争いが続いたりで、人々の心はまったく疑心暗鬼になってしまっていた。

 みんな、自分のためにだけ働き、互いに知らん顔で過ごしている。

 お坊さんたちが宿を借りようとすると、だれもが灯りを消し、門を閉ざしてしまう。

「この村の人たちはしあわせをしらぬ。石からスープをつくることをおしえてやろう」

 いちばん年長のソーはそう言って、木の枝を集め、火をおこし始めた。

 まもなく、一人の少女がやってくる。

「みなさんはなにをなさっていらっしゃるの?」

「石のスープを作るのだが、それにはまるい、すべすべの石が三ついる」

 そういう石は中庭にあると教えてもらい、少女に借りた大きな鍋で、石のスープづくりが始まる。


 すると、あんなに堅く門を閉めていた村人がひとりまたひとりと出てきた。

「塩とこしょうで味付けするのが、石のスープのやり方だが、わしらはそれをもたない」

 ロクがいうと、だれかが塩をもってきた。

「にんじんを入れたときにはもっと上手かった」

 ソーが言うと、だれかがにんじんをたくさんもってきた。

「タマネギもわるくないのでは?」

 ホクが言うと、だれかがタマネギを持ってきた。

 こんな調子で、きのこ、うどん、さやえんどう、キャベツ、きくらげ、いも、とうふとさまざまなものが持ち込まれ、そのたびに、鍋からはなんともいえずにいい香りがただよってきた。

 スープができあがると村人たちは、提灯にあかりを灯して、大喜びで大宴会を始めた。

 ごはん、おまんじゅう、きのみ、おかし、おちゃと、互いに持ち寄った様々なものがテーブルに並び、村人たちは、時を忘れて、和やかに昔話に花を咲かせた。


 石のスープは、人々がともにしあわせに生きるためにお坊さんが作ったひとつの仕掛け。

 人々が心を開き、わかちあうことができてこそ、スープはどんどんコクが出て美味しくなり、味わい深いものとなる。

 なにも気構えずとも、それはとてもかんたんなこと。しあわせとは、石のスープを作るようにかんたんなことだと教えてくれる一冊だ。


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― 新着の感想 ―
わたしが読んだのは講談社の世界のメルヘン17巻(南欧の童話集)でポルトガル?の修道士さんだったと思います。石を洗って水に入れて火をつけて、塩、キャベツ、ソーセージがあればもっと美味しくなるのになー?(…
[良い点] 素敵なお話ですね。石でスープかぁ。 さぞかしおいしいスープが出来た事と思います。 (*´▽`*)
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